第6章 債権譲渡に関する見直し
債権譲渡に関する見直し
-重要な実質改正事項-
債権譲渡とは、債権者Aの債務者Bに対する債権について、AC間の売買などにより、その債権を新たな債権者Cに移転すること
※債権譲渡の目的
弁済期前の金銭化のほか、担保化の手段として(譲渡担保)
債権譲渡による資金調達の拡充とそれに伴う問題
近時、債権譲渡(譲渡担保)による資金調達が、特に中小企業の資金調達手法として活用されることが期待されている。
※例えば、中小企業が自己の有する現在または将来の売掛債権等を原資として資金調達を行うことがある。
しかし・・・
(平時)
旧法466条の定める譲渡制限特約が資金調達を行う際の支障になっている。
将来の債権の譲渡が可能であることが条文上明確でない。
改正法の内容
債権の譲渡制限特約の効力の見直し → 詳細は次ページ
将来債権の譲渡が可能であることを明らかにする規定の新設 【新§466条の6】
譲渡担保:担保化の目的で動産・債権等の権利を形式的に移転させること(返済が無事に終われば元の権利者に復帰する)
(例)ゼネコン(B)から継続的に仕事を受注している
下請会社(A)が、金融機関(C)から融資を受ける際に、今後1年間に発生するゼネコン(B)に対する請負代金債権を担保として提供
債権譲渡(譲渡担保)
譲渡制限特約の役割(旧法)
「譲渡制限特約」とは、債権の譲渡を禁止し、または制限する旨の債権者・債務者間の特約をいう。
譲渡制限特約が付された債権の譲渡は原則無効
債務者にとっては弁済の相手方を固定するために重要
改正法の内容 【新§466、 466条の2、 466条の3】
譲渡制限特約が付されていても、債権譲渡の効力は妨げられない(ただし、預貯金債権は除外)。
弁済の相手方を固定することへの債務者の期待を形を変えて保護
・債務者は、基本的に譲渡人(元の債権者)に対する弁済等をもって譲受人に対抗することができる(免責される)。
譲受人の保護
・債務者が譲受人から履行の催告を受け、相当の期間内に履行をしないときは、債務者は、譲受人に対して履行をしなければならない。
・譲渡人が破産したときは、譲受人は、債務者に債権の全額に相当する金銭を供託するよう請求することができる(譲渡人への弁済は譲受人に対抗できない)。
債権譲渡に関する見直し(債権の譲渡制限特約)
問題の所在
債権譲渡に必要な債務者の承諾を得られないことが少なくない。
債権譲渡が無効となる可能性が払拭しきれないため、譲渡(担保設定)に当たって債権の価値が低額化。
弁済
改正法
債務者
債権者(譲渡人) 譲受人
(悪意重過失)
売掛債権等
(譲渡制限特
約付き) 譲渡は有効
しかし、解除されると債権が発生しない
改正法の下での解釈論
改正法では、債務者は、基本的に譲渡人(元の債権者)に対する弁済等をすれば免責されるなど、弁済の相手方を固定することへの債務者の期待は形を変えて保護されている。
そうすると、以下の解釈ができると考えられる。
譲渡制限特約が弁済の相手方を固定する目的でされたときは、債権譲渡は必ずしも特約の趣旨に反しないと見ることができる。
そもそも契約違反(債務不履行)にならない。
債権譲渡がされても債務者にとって特段の不利益はない。
取引の打切りや解除を行うことは、極めて合理性に乏しく、権利濫用等に当たりうる。
債権譲渡に関する見直し(債権の譲渡制限特約)
実務上の懸念
譲渡制限特約が付された債権の譲渡が有効であるとしても、債権者・債務者間の特約に違反したことを理由に契約が解除されてしまうのではないか?
解除ができるとすると、債権譲渡をしたために取引を打ち切られるリスクがある。
譲受人にとっても、解除によって債権が発生しないおそれがあるため、そのような債権を譲り受けるのは困難。
解除
債権譲渡は契約違反だ 資金調達の円滑化につながらないおそれがないか?
なる
債権譲渡は契約違反(債務不履行)になるか?
ならない
解除権の行使は権利の濫用に当たるか?
解除は不可