中部電力事件・株主代表訴訟における担保提供決定が抗告審において変更された事例
担保提供決定に対する即時抗告申立事件
【事件番号】 名古屋高等裁判所決定/平成7年(ラ)第49号
【判決日付】 平成7年11月15日
【判示事項】 株主代表訴訟における担保提供決定が抗告審において変更された事例
【判決要旨】 電力会社の原子力発電所の建設計画の維持のため六〇億円の支出と漁協に対する二億円の支出が違法であるとする取締役に対する株主による損害賠償を求める株主代表訴訟において、右六〇億円の損害賠償請求に関する訴えについては「悪意」に出たものとして担保の堤供を命ずるのが相当であるが、右二億円の損害賠償請求に関する訴えについては不当訴訟であるとは断定できないし、株主代表訴訟制度の目的を逸脱ないし濫用するものとは認められず担保の提供を命ずることはできない。
【参照条文】 商法106-2
商法267-5
商法267-6
【掲載誌】 判例タイムズ892号121頁
金融・商事判例983号10頁
商事法務資料版141号191頁
会社法
(株主による責任追及等の訴え)
第八百四十七条 六箇月(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前から引き続き株式を有する株主(第百八十九条第二項の定款の定めによりその権利を行使することができない単元未満株主を除く。)は、株式会社に対し、書面その他の法務省令で定める方法により、発起人、設立時取締役、設立時監査役、役員等(第四百二十三条第一項に規定する役員等をいう。)若しくは清算人(以下この節において「発起人等」という。)の責任を追及する訴え、第百二条の二第一項、第二百十二条第一項若しくは第二百八十五条第一項の規定による支払を求める訴え、第百二十条第三項の利益の返還を求める訴え又は第二百十三条の二第一項若しくは第二百八十六条の二第一項の規定による支払若しくは給付を求める訴え(以下この節において「責任追及等の訴え」という。)の提起を請求することができる。ただし、責任追及等の訴えが当該株主若しくは第三者の不正な利益を図り又は当該株式会社に損害を加えることを目的とする場合は、この限りでない。
2 公開会社でない株式会社における前項の規定の適用については、同項中「六箇月(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前から引き続き株式を有する株主」とあるのは、「株主」とする。
3 株式会社が第一項の規定による請求の日から六十日以内に責任追及等の訴えを提起しないときは、当該請求をした株主は、株式会社のために、責任追及等の訴えを提起することができる。
4 株式会社は、第一項の規定による請求の日から六十日以内に責任追及等の訴えを提起しない場合において、当該請求をした株主又は同項の発起人等から請求を受けたときは、当該請求をした者に対し、遅滞なく、責任追及等の訴えを提起しない理由を書面その他の法務省令で定める方法により通知しなければならない。
5 第一項及び第三項の規定にかかわらず、同項の期間の経過により株式会社に回復することができない損害が生ずるおそれがある場合には、第一項の株主は、株式会社のために、直ちに責任追及等の訴えを提起することができる。ただし、同項ただし書に規定する場合は、この限りでない。
(責任追及等の訴えに係る訴訟費用等)
第八百四十七条の四 第八百四十七条第三項若しくは第五項、第八百四十七条の二第六項若しくは第八項又は前条第七項若しくは第九項の責任追及等の訴えは、訴訟の目的の価額の算定については、財産権上の請求でない請求に係る訴えとみなす。
2 株主等(株主、適格旧株主又は最終完全親会社等の株主をいう。以下この節において同じ。)が責任追及等の訴えを提起したときは、裁判所は、被告の申立てにより、当該株主等に対し、相当の担保を立てるべきことを命ずることができる。
3 被告が前項の申立てをするには、責任追及等の訴えの提起が悪意によるものであることを疎明しなければならない。