労働者派遣法の潜脱を狙った,偽装請負に、慰謝料が認められた事例
名古屋高等裁判所判決/平成23年(ネ)第615号
平成24年2月10日
地位確認等請求控訴事件
【判示事項】 1 被控訴人(一審被告)派遣先Y社における就労が訴外派遣元A社を雇用主として当初は偽装請負にあったが,実態は労働者派遣であった控訴人(一審原告)X1,ならびに,そのY社での就労において控訴人(一審原告)X2の従事する業務が専門26業務に当たらないことにより,当初より労働者派遣法上の派遣受入可能期間の制限に違反するという違法なものであったX2が,Y社に対し,雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認および賃金の支払いを求めるとともに,不法行為による損害賠償の支払いを求めた事案につき,X1の請求を不法行為による損害賠償(慰謝料)100万円等の支払いを求める限度で,X2の請求を不法行為による損害賠償(慰謝料)30万円等の支払いを求める限度で,それぞれ認容し,その余をいずれも棄却した一審判決の判断が維持された例
2 Y社は,意図的に労働者派遣法の潜脱を狙い,企業として大々的に業務偽装を行っていたのであるから,労働者派遣法における労働者保護規定や職業安定法における直接雇用の原則に照らし,Xらを直接雇用したものとして責任を負うべきである等とするXらの追加主張に対し,本件事実関係の下では,Xらからも,Y社からも,明示的にも,黙示的にも,雇用契約の成立に向けた意思表示(申込みまたは承諾)があったと認めるに足りないし,Xらの主張は,実質的には,労働者派遣法上の規制が潜脱された場合には,雇用契約の成立を擬制すべきであるとするものにほかならないというべきであるが,そのように解すべき法律上の根拠はないとして,かかるXらの追加主張が退けられた例
【掲載誌】 労働判例1054号76頁