証拠保全の検証物提示義務(検証協力義務)の範囲
テーマ:民事法・民事訴訟法・民事執行法,ADR
大阪高等裁判所決定平成25年4月5日
検証物提示命令に対する抗告事件
【判示事項】 1 本案訴訟では書証とされる文書で、文書提出義務が認められないものにについて、証拠保全として検証による証拠調べを行う場合における検証物提示命令発令の許否
2 金融商品の販売に関する損害賠償請求訴訟の起訴前の証拠保全として発令された①適合性審査書類と、②接触記録・日誌の検証物提示命令につき、①は民事訴訟法220条4号ニ所定の文書に該当する、②は同文書該当性につきイン・カメラ手続等を利用して判断すべきとされた事例
【判決要旨】 1 本案訴訟では書証とされる文書で、かつ、文書提出義務が認められないものについて、証拠保全として検証による証拠調べを行う場合には、検証物提示命令を発することができない。
2 金融商品の販売に関して作成された顧客の適合性審査書類については、文書の性質上、忌憚のない評価や意見が記載されることが予定され、開示されると、内部における自由な意見の表明に支障を来し、自由な意思形成が阻害されるおそれがあり、特段の事情がない限り、民事訴訟法220条4号ニ所定の文書に該当する。金融商品の販売に関して作成された顧客との接触・日誌については、開示によって看過し難い不利益を生じる記載の有無等につき、検証の必要性の最終判断権者たる原審がイン・カメラ手続等を利用して判断するのが相当である。
【参照条文】 民事訴訟法234
民事訴訟法232
民事訴訟法220
【掲載誌】 金融法務事情1981号91頁