交通事故・相続・債権回収でお困りの方はお気軽にご相談下さい

法律相談のご予約・お問い合わせはこちらまで03−6904−7423
新着情報
2023年10月03日
受贈者に対する農地の所有権移転登記が、死亡した贈与者名義でなされている場合であつても、右登記が死亡者及びその相続人の意思に反しないものと認められ、かつ、実体上の権利関係に吻合するものであるときは、相続人は受贈者に対し右登記の抹消を請求しえない。

受贈者に対する農地の所有権移転登記が、死亡した贈与者名義でなされている場合であつても、右登記が死亡者及びその相続人の意思に反しないものと認められ、かつ、実体上の権利関係に吻合するものであるときは、相続人は受贈者に対し右登記の抹消を請求しえない。

 

 

土地所有権移転登記抹消登記手続請求事件

【事件番号】      最高裁判所第2小法廷判決/昭和27年(オ)第653号

【判決日付】      昭和30年9月9日

【判示事項】      受贈者に対する農地の所有権移転登記が、死亡した贈与者名義でなされている場合であつても、右登記が死亡者及びその相続人の意思に反しないものと認められ、かつ、実体上の権利関係に吻合するものであるときは、相続人は受贈者に対し右登記の抹消を請求しえない。

【参照条文】      旧農地調整法4

             旧農地調整法施行令2

             不動産登記法26

             不動産登記法35

【掲載誌】        最高裁判所民事判例集9巻10号1228頁

             判例タイムズ53号32頁

【評釈論文】      登記先例解説集10巻6号89頁

 

 

昭和二十七年法律第二百二十九号

農地法

(農地又は採草放牧地の権利移動の制限)

第三条 農地又は採草放牧地について所有権を移転し、又は地上権、永小作権、質権、使用貸借による権利、賃借権若しくはその他の使用及び収益を目的とする権利を設定し、若しくは移転する場合には、政令で定めるところにより、当事者が農業委員会の許可を受けなければならない。ただし、次の各号のいずれかに該当する場合及び第五条第一項本文に規定する場合は、この限りでない。

一 第四十六条第一項又は第四十七条の規定によつて所有権が移転される場合

二 削除

三 第三十七条から第四十条までの規定によつて農地中間管理権(農地中間管理事業の推進に関する法律第二条第五項に規定する農地中間管理権をいう。以下同じ。)が設定される場合

四 第四十一条の規定によつて同条第一項に規定する利用権が設定される場合

五 これらの権利を取得する者が国又は都道府県である場合

六 土地改良法(昭和二十四年法律第百九十五号)、農業振興地域の整備に関する法律(昭和四十四年法律第五十八号)、集落地域整備法(昭和六十二年法律第六十三号)又は市民農園整備促進法(平成二年法律第四十四号)による交換分合によつてこれらの権利が設定され、又は移転される場合

七 農地中間管理事業の推進に関する法律第十八条第七項の規定による公告があつた農用地利用集積等促進計画の定めるところによつて同条第一項の権利が設定され、又は移転される場合

八 特定農山村地域における農林業等の活性化のための基盤整備の促進に関する法律(平成五年法律第七十二号)第九条第一項の規定による公告があつた所有権移転等促進計画の定めるところによつて同法第二条第三項第三号の権利が設定され、又は移転される場合

九 農山漁村の活性化のための定住等及び地域間交流の促進に関する法律(平成十九年法律第四十八号)第九条第一項の規定による公告があつた所有権移転等促進計画の定めるところによつて同法第五条第十項の権利が設定され、又は移転される場合

九の二 農林漁業の健全な発展と調和のとれた再生可能エネルギー電気の発電の促進に関する法律(平成二十五年法律第八十一号)第十七条の規定による公告があつた所有権移転等促進計画の定めるところによつて同法第五条第四項の権利が設定され、又は移転される場合

十 民事調停法(昭和二十六年法律第二百二十二号)による農事調停によつてこれらの権利が設定され、又は移転される場合

十一 土地収用法(昭和二十六年法律第二百十九号)その他の法律によつて農地若しくは採草放牧地又はこれらに関する権利が収用され、又は使用される場合

十二 遺産の分割、民法(明治二十九年法律第八十九号)第七百六十八条第二項(同法第七百四十九条及び第七百七十一条において準用する場合を含む。)の規定による財産の分与に関する裁判若しくは調停又は同法第九百五十八条の二の規定による相続財産の分与に関する裁判によつてこれらの権利が設定され、又は移転される場合

十三 農地中間管理機構が、農林水産省令で定めるところによりあらかじめ農業委員会に届け出て、農業経営基盤強化促進法第七条第一号に掲げる事業の実施によりこれらの権利を取得する場合

十四 農業協同組合法第十条第三項の信託の引受けの事業又は農業経営基盤強化促進法第七条第二号に掲げる事業(以下これらを「信託事業」という。)を行う農業協同組合又は農地中間管理機構が信託事業による信託の引受けにより所有権を取得する場合及び当該信託の終了によりその委託者又はその一般承継人が所有権を取得する場合

十四の二 農地中間管理機構が、農林水産省令で定めるところによりあらかじめ農業委員会に届け出て、農地中間管理事業(農地中間管理事業の推進に関する法律第二条第三項に規定する農地中間管理事業をいう。以下同じ。)の実施により農地中間管理権又は経営受託権(同法第八条第三項第三号ロに規定する経営受託権をいう。)を取得する場合

十四の三 農地中間管理機構が引き受けた農地貸付信託(農地中間管理事業の推進に関する法律第二条第五項第二号に規定する農地貸付信託をいう。)の終了によりその委託者又はその一般承継人が所有権を取得する場合

十五 地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二百五十二条の十九第一項の指定都市(以下単に「指定都市」という。)が古都における歴史的風土の保存に関する特別措置法(昭和四十一年法律第一号)第十九条の規定に基づいてする同法第十一条第一項の規定による買入れによつて所有権を取得する場合

十六 その他農林水産省令で定める場合

2 前項の許可は、次の各号のいずれかに該当する場合には、することができない。ただし、民法第二百六十九条の二第一項の地上権又はこれと内容を同じくするその他の権利が設定され、又は移転されるとき、農業協同組合法第十条第二項に規定する事業を行う農業協同組合又は農業協同組合連合会が農地又は採草放牧地の所有者から同項の委託を受けることにより第一号に掲げる権利が取得されることとなるとき、同法第十一条の五十第一項第一号に掲げる場合において農業協同組合又は農業協同組合連合会が使用貸借による権利又は賃借権を取得するとき、並びに第一号、第二号及び第四号に掲げる場合において政令で定める相当の事由があるときは、この限りでない。

一 所有権、地上権、永小作権、質権、使用貸借による権利、賃借権若しくはその他の使用及び収益を目的とする権利を取得しようとする者又はその世帯員等の耕作又は養畜の事業に必要な機械の所有の状況、農作業に従事する者の数等からみて、これらの者がその取得後において耕作又は養畜の事業に供すべき農地及び採草放牧地の全てを効率的に利用して耕作又は養畜の事業を行うと認められない場合

二 農地所有適格法人以外の法人が前号に掲げる権利を取得しようとする場合

三 信託の引受けにより第一号に掲げる権利が取得される場合

四 第一号に掲げる権利を取得しようとする者(農地所有適格法人を除く。)又はその世帯員等がその取得後において行う耕作又は養畜の事業に必要な農作業に常時従事すると認められない場合

五 農地又は採草放牧地につき所有権以外の権原に基づいて耕作又は養畜の事業を行う者がその土地を貸し付け、又は質入れしようとする場合(当該事業を行う者又はその世帯員等の死亡又は第二条第二項各号に掲げる事由によりその土地について耕作、採草又は家畜の放牧をすることができないため一時貸し付けようとする場合、当該事業を行う者がその土地をその世帯員等に貸し付けようとする場合、その土地を水田裏作(田において稲を通常栽培する期間以外の期間稲以外の作物を栽培することをいう。以下同じ。)の目的に供するため貸し付けようとする場合及び農地所有適格法人の常時従事者たる構成員がその土地をその法人に貸し付けようとする場合を除く。)

六 第一号に掲げる権利を取得しようとする者又はその世帯員等がその取得後において行う耕作又は養畜の事業の内容並びにその農地又は採草放牧地の位置及び規模からみて、農地の集団化、農作業の効率化その他周辺の地域における農地又は採草放牧地の農業上の効率的かつ総合的な利用の確保に支障を生ずるおそれがあると認められる場合

3 農業委員会は、農地又は採草放牧地について使用貸借による権利又は賃借権が設定される場合において、次に掲げる要件の全てを満たすときは、前項(第二号及び第四号に係る部分に限る。)の規定にかかわらず、第一項の許可をすることができる。

一 これらの権利を取得しようとする者がその取得後においてその農地又は採草放牧地を適正に利用していないと認められる場合に使用貸借又は賃貸借の解除をする旨の条件が書面による契約において付されていること。

二 これらの権利を取得しようとする者が地域の農業における他の農業者との適切な役割分担の下に継続的かつ安定的に農業経営を行うと見込まれること。

三 これらの権利を取得しようとする者が法人である場合にあつては、その法人の業務を執行する役員又は農林水産省令で定める使用人(次条第一項第三号において「業務執行役員等」という。)のうち、一人以上の者がその法人の行う耕作又は養畜の事業に常時従事すると認められること。

4 農業委員会は、前項の規定により第一項の許可をしようとするときは、あらかじめ、その旨を市町村長に通知するものとする。この場合において、当該通知を受けた市町村長は、市町村の区域における農地又は採草放牧地の農業上の適正かつ総合的な利用を確保する見地から必要があると認めるときは、意見を述べることができる。

5 第一項の許可は、条件をつけてすることができる。

6 第一項の許可を受けないでした行為は、その効力を生じない。

 

 

平成十六年法律第百二十三号

不動産登記法

(登記の抹消)

第六十八条 権利に関する登記の抹消は、登記上の利害関係を有する第三者(当該登記の抹消につき利害関係を有する抵当証券の所持人又は裏書人を含む。以下この条において同じ。)がある場合には、当該第三者の承諾があるときに限り、申請することができる。

 

 

 

 

 

       主   文

 

 本件上告を棄却する。

 上告費用は上告人の負担とする。

 

       理   由

 

 上告代理人藤沼武男の上告理由について。

 本件農地はもと、上告人の先代亡Aの所有であつたが、同人は昭和二四年九月一四日これを被上告人に贈与したこと、右贈与については被上告人は栃木県知事に対し、農地調整法施行令第二条第一項に基き、これが許可の申請をなし、同年一二月二日附をもつて同知事から許可せられたことは原判決の確定するところである。従つて、右農地の贈与はその許可によつて、許可のあつたときから効力を生じたものと解すべきである。原判決は、右許可により贈与契約成立のときに遡つて効力を生ずるものと判示しているけれども、許可は右贈与の効力発生の要件であることは、農地調整法第四条の規定するところであり、原判決のごとき効力の遡及を認めるべき法的根拠はないのであるから、この点に関する原判決の判断はあやまりであるといわなければならない。しかしながら、本件贈与契約は亡Aの生前に成立したことは前段説示のとおりであつて、右許可が同人死亡後に受贈者たる被上告人に対しなされたという事実は右贈与の効力の発生を妨げるものではない。論旨は右許可の当時Aは既に死亡していたのであるから、贈与は遂にその効力を発生せずに終つたのであると主張するけれどもかかる見解を採ることはできない。けだし、この許可は贈与の有効要件であつてその成立の要件でないのみならず、この許可は所論のように必ずしも贈与の成立前になされなければならないものと解すべき根拠はないからである。ただ、その効力は許可のときから将来に向つて発生すべきことは所論のとおりであつて、この点に関する原判決の判断のあやまりであることは前説示のとおりであるけれども、右許可のときに、贈与者の死亡せることはその効力の発生を妨げるものではなく、被上告人は右贈与に因り本件農地の所有権を取得したものと解する以上、原判決の前示解釈上のあやまりは結局において、右結論に影響するところないものと云わざるを得ない。

 次に、右贈与に因る本件農地の所有権移転登記については昭和二五年一月一四日、権利者、被上告人名義に登記のなされていることは原判決の確定するところである。しかして右登記が当時既に死亡していたAを登記義務者としてなされたことも原判決の確定するところであるけれども、右贈与についてはAの相続人たる上告人においても異議のなかつたところであり、被上告人が前記知事の許可の申請をするにあたつても、これに添付すべき上告人名義の同意書については、被上告人は上告人から、その作成方を依頼され、その印章をも預けられ、その委託にもとずいてこれを作成提出した事情関係にあることは、これまた、原判決の確定するところである。して見れば、特段の事情のみるべきもののない本件においては被上告人が、亡A名義を以てした前示所有権移転の登記は、亡Aの意思はもとより、上告人の意思にも反するものでないと解するのが相当であつて、もとより、所論の如く不正無効の登記を以て目すべきかぎりでない。しかして、右登記が、贈与に因る本件農地の所有権移転の実体と吻合するものであることは原判示のとおりであるから、かくの如き場合、上告人は被上告人に対し右登記抹消請求の権利はないものと判断して、上告人の右請求を排斥した原判決は正当であつて、これと反対の見地に立つ論旨は理由なきものと云わなければならない。

 よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、全裁判官一致の意見を以て主文のとおり判決する。

     最高裁判所第二小法廷

top

法律相談のご予約・お問い合わせはこちらまで03−6904−7423