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2023年10月06日
民法(債権法)の平成29年改正その16 第17章 隔地者間の契約の成立に関する見直し

第17章 隔地者間の契約の成立に関する見直し

第1節 申込みの撤回権の新設

【旧法】 申込みの相手方が隔地者

申込みの相手方が対話者

承諾期間の定め

相当な期間を経過するまで撤回不可(旧法§524)

規定なし

撤回不可。期間内に承諾がないと申込みの効力消滅(旧法§521)

対話者に対する契約の申込みの効力等の明記

(改正法の内容)

対話者に対して承諾の期間を定めないで行った申込みに関する有力な解釈を明文化

対話が継続している間であればいつでも申込みの撤回が可能(新§525条2項)

対話継続中に承諾がされなければ、申込みは効力を失う(新§525条3項)

※ 併せて、原則撤回不可の申込みも撤回権を留保したケースでは撤回可能等の例外的取扱いについての解釈も明文化(新§523条1項、 §525条1項、 §525条3項)

契約の申込みと撤回 :契約は、申込みがされ、それに対して承諾があれば、成立する。申込みが撤回され、またはその効力の消滅後に承諾があっても、契約は成立しない。

隔地者と対話者 :意思表示が到達するまでに時間を要する者を「隔地者」と、要しない者を「対話者」という。

空間的な距離ではなく時間が判断の基準となるため、電話の相手方は対話者となる。

・ 問題の所在

隔地者に対して承諾の期間を定めないで(~までに回答してください、と定めずに)行った申込みについては規定があるが、対話者に対して承諾の期間を定めないで行った申込みについて規定はなく、そのルールが不明瞭。

【改正法】 申込みの相手方が隔地者

申込みの相手方が対話者

承諾期間の定め

相当な期間を経過するまで撤回不可(ただし、撤回権を留保したときは可能)(新

  • 525条1項)

・対話継続中は撤回可能(新§525条2項)

・対話継続中に承諾がなければ申込みの効力消滅(不消滅の意思が表示されたときは不消滅)(新§525条3項)

撤回不可(ただし、撤回権を留保したときは可能)

期間内に承諾がないと申込みの効力消滅

(新§523条1項)

・ 基本的な概念

 

第2節 隔地者間の契約の成立時期の見直し

改正法

隔地者間の契約の成立時期の見直し

旧法§ 526条1項を削除

隔地者間の場合でも、承諾の意思表示が相手方に到達した時に効力が発生(旧法§97条1項が適用される。)

(改正法の内容)

申込み→承諾の意思表示を発信→承諾の意思表示が到達

時間がかかる(通信手段:未発達)

契約成立時間がかからない

(通信手段:発達)

隔地者間の契約に関しては、「発信主義」(承諾通知を発信した時に契約が成立)を採用(旧法§ 526条1項)。

※ 意思表示は相手方に到達した時に効力を生ずるとの到達主義(旧法§97条1項)の例外。取引の迅速性を考慮。承諾者が早めに履行の準備を行うことを可能にする。

(旧法)

申込み→承諾の意思表示を発信→承諾の意思表示が到達

契約成立

(問題の所在)

旧法

・ 承諾通知の発信時に契約が成立すると、申込者が知らない間に履行遅滞 に陥るおそれがあるなど、申込者が不測の損害を被るおそれがある。

・ 当事者が迅速な契約の成立を望むのであればメール等を使えばよく、迅速な通信手段のある今日では例外規定を置く必要性に乏しい。

※既にインターネット上の取引においては、発信主義ではなく、到達主義を採用(電子消費者契約法)。

 

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