ブルームバーグ・エル・ピー事件・記者として勤務していたYと解雇の有効性について係争中であるX社が,国際企業と一般的な日本企業との雇用形態には差異があることから,Y社主張に係る解雇事由の検討に当たっては,雇用文化の多様性という観点が不可欠であるなど」とのY社が控訴審において追加した主張につき,わが国において,国際企業がいかなる人事制度を採用しても,法令に反しない限り自由であり,その人事制度が一般的な日本企業と異なることが,労働契約法16条に規定する解雇権の濫用の判断に影響しない
地位確認等請求控訴事件
【事件番号】 東京高等裁判所判決/平成24年(ネ)第6853号
【判決日付】 平成25年4月24日
【判示事項】 1 控訴人(一審被告)Y社が被控訴人(一審原告)Xを「職務能力の低下」を理由に解雇したことにつき,本件解雇は,Y社主張にかかる各解雇事由を個別に検討しても,客観的合理性があるとはいえないばかりか,これらを総合的に検討しても,客観的合理性があるとはいえないと解するのが相当であり,無効であるとして,Y社の請求が棄却され,一審判断が維持された例
2 「Y社のような国際企業といわゆる一般的な日本企業との雇用形態には差異があることから,Y社主張に係る解雇事由の検討に当たっては,雇用文化の多様性という観点が不可欠であるなど」とのY社が控訴審において追加した主張につき,わが国において,国際企業がいかなる人事制度を採用しても,法令に反しない限り自由であり,その人事制度がいわゆる一般的な日本企業と異なることが,労働契約法16条に規定する解雇権の濫用の判断に影響しないと直ちにいい切れないが,Y社は,Y社の人事制度,すなわち,その労働者の募集および採用,配置,昇進,降格および教育訓練,賃金制度,退職の勧奨および定年等が,いわゆる一般的な日本企業のそれと異なることについて,何ら具体的に主張していないし,また,Xが採用された経緯,すなわち,Xが採用された際,Y社の人事制度についてどのような説明がされ,それがいわゆる一般的な日本企業の場合とどのように異なっていたのか等についても,何ら具体的に主張していないばかりか,かえって,Y社において,労働者の採用選考上Y社の特色あるビジネスモデル等に応じた格別の基準を設定したりしたことはないと認められることは一審判決の事実および理由の記載のとおりであるから,結局のところ,Y社が主張する雇用文化の多様性は,単なる一般論にすぎず,個別具体的な事件における解雇事由の判断に影響を与えるようなものではないとされた例
【掲載誌】 労働判例1074号75頁
労働契約法
(解雇)
第十六条 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。