第6章 その他の改正内容の概要
以上に述べてきたもののほか,改正法は以下のような各種改正を含んでいます。
紙幅の都合上,以下では詳細な説明は割愛し,各改正内容の概要を示すにとどめたいと思います。
1,弁護人選任権の教示
刑事訴訟法第76条,第77条において規定されている弁護人選任権の告知ないし教示について,旧法では単に「弁護人の選任を請求することができる旨を告げなければならない」とされていましたが,改正法により,「弁護士,弁護士法人または弁護士会を指定して弁護人の選任を申し出ることができる旨及びその申出先を教示しなければならない」とされました。
2,裁量保釈の考慮事情の明文化
刑事訴訟法第90条の定める裁量保釈について,「保釈された場合に被告人が逃亡しまたは罪証を隠滅するおそれの程度のほか、身体の拘束の継続により被告人が受ける健康上、経済上、社会生活上または防御の準備上の不利益の程度その他の事情を考慮し」との考慮事情が明文化されました。
3,公判前整理手続等に関する改正
公判前整理手続請求権(刑事訴訟法第316条の2第1項)及び期日間整理手続請求権(同316条の28第1項)の法定,類型証拠開示の対象拡大(同316条の15第1項第9号,同条第2項),証拠一覧表の交付義務(同316条の14第2項)の法定等を内容とする改正です。
4,証人を勾引するための要件の緩和
刑事訴訟法第152条において規定されている証人の勾引を,召喚に応じないおそれがある場合にも可能とする改正であり,当該証人が召喚に応じず不出頭となった事実を必要としていた旧法と比べて,その要件が緩和されました。
5,ビデオリンク方式による証人尋問の拡充
被害者・証人保護などのため、一定の要件のもとで,裁判所と同一構内以外の場所におけるビデオリンク方式による証人尋問を行えるようになりました(刑事訴訟法第157条の6第2項)。
6,証人等の特定事項の秘匿等に関する改正
検察官による証人等の氏名等の開示制限(刑事訴訟法第299条の4),公開の法廷における証人等の氏名等の秘匿措置(同第299条の5,同299条の6)の法定等を内容とする改正です。