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2023年10月22日
消費者契約法の平成28年・30年改正その2 第2部 消費者契約法の平成28年改正

​​​​​​​第2部 消費者契約法の平成28年改正

第1章 はじめに

消費者契約法の一部を改正する法律(平成28年法律第61号)については、平成28年3月4日に国会に法案を提出し、同年5月10日に衆議院において全会一致で可決された後、同年5月25日に参議院において全会一致で可決され、成立しました。その後、同年6月3日に平成28年法律第61号として公布されました。この法律は、一部の規定を除き、公布の日から起算して1年を経過した日(平成29年6月3日)から施行されました(附則1条本文)。

残りの規定は、令和2年4月1日から施行されました。

第2章 旧消費者契約法の概要

 平成28年5月に消費者契約法が改正されました。改正された内容は、( 1)過量な内容の契約についての取消権、(2)不実告知取消権における重要事項の追加、(3)取消権を行使した場合の返還範囲の制限、(4)取消権の行使期間の伸長、(5)不当条項の拡大、(6)10条無効の例の条文化です。

 消費者と事業者の間には、取引のための情報の質と量や交渉力において、構造的に格差があります。消費者契約法は、この格差に着目し、事業者が消費者を誤認・困惑させた場合に契約の申込み・承諾の意思表示を取り消すことができ(消費者契約の取消し)、また、事業者の損害賠償の責任免除条項その他の消費者の利益を不当に害する条項(不当条項)の全部または一部を無効とする(消費者契約の無効)法律です。平成12年4月に制定され、平成13年4月に施行されています。

 消費者契約の取消しが可能となるのは、①から④の場合です。

①     不実告知(不実告知の対象は、契約の目的物に関する重要事項)

②    断定的判断の提供

③不利益事実の不告知

④不退去・退去妨害

消費者契約の無効(不当条項の無効)には8条無効、9条無効、10条無効の3つの種類があります。

① 8条無効 事業者の債務不履行により消費者に生じた損害賠償責任の全部免除など

② 9条無効 損害賠償の予定額、違約金の合算額が、事業者に生ずべき平均的な額を超える場合の超過部分

③ 10条無効 民法、商法等の任意規定の適用による場合と比べ消費者の権利を制限する条項であって(10条前段要件)、信義則に反して消費者の利益を害するもの(10条後段要件)

第3章 消費者契約法の平成28年改正の概要

 企業が事業活動を行うに当たっては様々な契約を締結することになり、それには本来民法や商法が適用されます。しかし、企業(事業者)と消費者との間には、契約に関する構造的な「情報の質及び量並びに交渉力の格差」(消費者契約法1条)が存在します。

 そのため、そのような構造的な格差に着目して消費者契約法が制定されています。具体的には、①事業者が不当な勧誘をし、それによって消費者が契約を締結した場合にはその契約(についての申込み・承諾)の効力を否定できるようにするといった規定や、②消費者の利益を不当に害する契約条項を無効とするといった規定が定められています。

 消費者契約法は平成13年4月1日に施行されましたが、それ以降、日本では、高齢化の進展をはじめとするさまざまな変化が生じ、また、同法に関する裁判例や消費生活相談事例等が蓄積されてきました。

 消費者契約法は制定後、16年が経過しました。この間、高齢化の進展やネット取引の普及など、大きな社会経済情勢の変化がありましたが、消費者契約の取消し・無効に関する条項は、改正されていませんでした。

 そこで、平成28年5月、新たな社会経済情勢に対応するべく、消費者契約法が改正されました(以下、「平成28年改正」という)。

平成28年改正の内容は次のとおりです。

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