第9章 不当条項の追加(消費者の解除権を放棄させる条項)
旧法の規定はどういうものか
旧消費者契約法上、事業者と消費者の間で交わした契約の条項は、次の①から③に該当する場合に限り、無効と判断されます。
① 事業者の損害賠償責任を免除する条項を無効とする規定(8条)
② 消費者が支払う損害賠償の額を予定する条項等を無効とする規定(9条)
③ 消費者の利益を一方的に害する条項を無効とする規定(10条)
債務不履行や瑕疵担保責任に基づく消費者の解除権を放棄させる条項は、上記①や②の規定には該当しませんので、③の規定に該当するかが問題となります。
この点については、現行の消費者契約法10条に基づき無効と判断される可能性があると考えられますが、同条の規定は抽象的であるため、絶対に無効となるといえるほど明確なものではありませんでした。
改正の趣旨
そこで、当事者の予見可能性を高め、紛争を事前に回避する等の観点から、当該条項は特に不当性が高く例外なく無効とされる条項であると明示するため、改正法8条の2が新設されたものと考えられます。
不当条項の追加(消費者の解除権を放棄させる条項)
改正法では、事業者と消費者が契約をする際に、次の(a)・(b)の条項について、例外なく無効とする旨の規定が新設されました(改正法8条の2)。
(a)事業者の債務不履行により生じた消費者の解除権を放棄させる条項
(b)有償契約である消費者契約の目的物に隠れた瑕疵があること(請負契約の場合には、当該消費者契約の仕事の目的物に瑕疵があること)により生じた消費者の解除権を放棄させる条項
(消費者の解除権を放棄させる条項の無効)
第8条の2 次に掲げる消費者契約の条項は、無効とする。
1 事業者の債務不履行により生じた消費者の解除権を放棄させる条項
2 消費者契約が有償契約である場合において、当該消費者契約の目的物に隠れた瑕疵があること(当該消費者契約が請負契約である場合には、当該消費者契約の仕事の目的物に瑕疵があること)により生じた消費者の解除権を放棄させる条項