第10章 第10条の例示
民法、商法その他の法律の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比し、消費者の権利を制限し、又は消費者の義務を加重する条項であって、民法第1条第2項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものは無効と規定する第10条の例示として、消費者の不作為をもって当該消費者が新たな消費者契約の申込み又は承諾の意思表示をしたものとみなす条項を規定することとした。(第10条関係)
消費者の利益を一方的に害する条項の前段要件(10条前段要件)の例示
消費者の利益を一方的に害する条項とは
(消費者の利益を一方的に害する条項の無効)
第10条 民法 、商法その他の法律の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比し、消費者の権利を制限し、又は消費者の義務を加重する消費者契約の条項であって、民法第1条第2項 に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものは、無効とする。
消費者契約法10条は、①「民法、商法その他の法律の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比し、消費者の権利を制限し、又は消費者の義務を加重する消費者契約の条項」(10条前段要件)が、②「民法第1条第2項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害する」(10条後段要件)場合、当該条項を無効とする旨を規定しています。
もっとも、どのような条項が消費者契約法10条に該当し無効になり得るのか必ずしも明らかではありません。
改正による例示
そこで、改正法により、10条前段要件を満たす場合として、「消費者の不作為をもって当該消費者が新たな契約の申込み・承諾をしたとみなす条項」が例示されることになりました(改正法10条)。
(消費者の利益を一方的に害する条項の無効)
第10条 消費者の不作為をもって当該消費者が新たな消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたものとみなす条項その他の法令中の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比して消費者の権利を制限し又は消費者の義務を加重する消費者契約の条項であって、民法第1条第2項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものは、無効とする。
10条後段の要件
なお、10条前段要件を満たすとしても、10条後段要件を満たさない限り、当該条項が無効とならない点は現行の消費者契約法と同様です。
具体的な判断は個別事案によりますが、雑誌の定期購読契約における自動更新条項(契約期間が終了しても、当事者から特段の意思表示がなければ同じ条件で契約が更新されるといったもの)や、預金契約における条項(期限到来時に特段の意思表示なしに定期預金が普通預金に自動的に切り替わる)といった条項は、形式的には10条前段要件を満たすものの、消費者に予測できないような新たな負担を課すとまではいえず、10条後段要件を満たさないものと考えられます。
これに対し、例えば、冷蔵庫の購入者を対象とした、「冷蔵庫配送時にウォーターサーバーを設置し、特にお断りの連絡がなければ同サーバーのレンタルを行う」といった契約条項は、消費者が積極的な行為を何もしていないにもかかわらず無条件に契約を成立させ、当該契約成立後には当該消費者の認識にかかわらず当該契約に基づく代金支払いを負担させるものです。このため、消費者に不測の損害を与える可能性があり、10条後段要件を満たし、無効と判断される可能性があると考えられます。
8 その他
適格消費者団体の差止請求の対象となる行為の追加等の所要の規定の整備を行うこととした。