公職選挙法所定の詐欺投票罪の捜査のため投票済み投票用紙の差押え等がされた場合において投票した選挙人の投票の秘密に係る法的利益の侵害がないとされた事例
損害賠償請求事件
【事件番号】 最高裁判所第2小法廷判決/平成4年(オ)第2148号
【判決日付】 平成9年3月28日
【判示事項】 公職選挙法所定の詐欺投票罪の捜査のため投票済み投票用紙の差押え等がされた場合において投票した選挙人の投票の秘密に係る法的利益の侵害がないとされた事例
【判決要旨】 公職選挙法所定の詐偽投票扉の捜査のため、市議会議員選挙における特定の候補者甲の氏名を記載した投票済み投票用紙の差押えがされ、右用紙から検出された指紋と警察保管の指紋との照合がされたが、右選挙の選挙人で投票した甲及び乙らは詐偽投票扉の被害者とされておらず、右捜査により甲及び乙らの投票内容が外部に知られたとの事実はうかがえないし、右捜査は甲及び乙らの投票内容を探索する目的でされたものではなく、照合に使用された指紋には甲及び乙らの指紋は含まれていないため、指紋の照合により甲及び乙らの投票内容が外部に知られるおそれもなかったなど判示の事実関係の下においては、甲及び乙らが自己の投票の秘密に係る法的利益を侵害されたということはできない。
(補足意見がある。)
【参照条文】 憲法15-4
公職選挙法52
国家賠償法1-1
刑事訴訟法218
【掲載誌】 訟務月報44巻5号647頁
最高裁判所裁判集民事182号715頁
裁判所時報1192号140頁
判例タイムズ939号98頁
判例時報1602号71頁
憲法
第十五条 公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である。
② すべて公務員は、全体の奉仕者であつて、一部の奉仕者ではない。
③ 公務員の選挙については、成年者による普通選挙を保障する。
④ すべて選挙における投票の秘密は、これを侵してはならない。選挙人は、その選択に関し公的にも私的にも責任を問はれない。
公職選挙法
(投票の秘密保持)
第五十二条 何人も、選挙人の投票した被選挙人の氏名又は政党その他の政治団体の名称若しくは略称を陳述する義務はない。
国家賠償法
第一条1項 国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によつて違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる。
刑事訴訟法
第二百十八条 検察官、検察事務官又は司法警察職員は、犯罪の捜査をするについて必要があるときは、裁判官の発する令状により、差押え、記録命令付差押え、捜索又は検証をすることができる。この場合において、身体の検査は、身体検査令状によらなければならない。
② 差し押さえるべき物が電子計算機であるときは、当該電子計算機に電気通信回線で接続している記録媒体であつて、当該電子計算機で作成若しくは変更をした電磁的記録又は当該電子計算機で変更若しくは消去をすることができることとされている電磁的記録を保管するために使用されていると認めるに足りる状況にあるものから、その電磁的記録を当該電子計算機又は他の記録媒体に複写した上、当該電子計算機又は当該他の記録媒体を差し押さえることができる。
③ 身体の拘束を受けている被疑者の指紋若しくは足型を採取し、身長若しくは体重を測定し、又は写真を撮影するには、被疑者を裸にしない限り、第一項の令状によることを要しない。
④ 第一項の令状は、検察官、検察事務官又は司法警察員の請求により、これを発する。
⑤ 検察官、検察事務官又は司法警察員は、身体検査令状の請求をするには、身体の検査を必要とする理由及び身体の検査を受ける者の性別、健康状態その他裁判所の規則で定める事項を示さなければならない。
⑥ 裁判官は、身体の検査に関し、適当と認める条件を附することができる。