船舶共有者が商法690条の規定により負担する債務の性質
損害賠償請求控訴事件
【事件番号】 名古屋高等裁判所判決/昭和49年(ネ)第389号
【判決日付】 昭和52年2月15日
【判示事項】 1、船舶共有者が商法690条の規定により負担する債務の性質
2、中古船舶の減失による損害額の算定事例
【参照条文】 民法709
商法690(昭和50年法律第94号による改正前と改正後のもの)
商法696
船舶の所有者等の責任の制限に関する法律6
船舶の所有者等の責任の制限に関する法律7
【掲載誌】 判例タイムズ352号209頁
判例時報868号89頁
民法
(不法行為による損害賠償)
第七百九条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
商法
(船舶所有者の責任)
第六百九十条 船舶所有者は、船長その他の船員がその職務を行うについて故意又は過失によって他人に加えた損害を賠償する責任を負う。
(持分の譲渡)
第六百九十六条 船舶共有者の間に組合契約があるときであっても、各船舶共有者(船舶管理人であるものを除く。)は、他の船舶共有者の承諾を得ないで、その持分の全部又は一部を他人に譲渡することができる。
2 船舶管理人である船舶共有者は、他の船舶共有者の全員の承諾を得なければ、その持分の全部又は一部を他人に譲渡することができない。
船舶の所有者等の責任の制限に関する法律
(船舶の所有者等の責任の制限)
第三条 船舶所有者等又はその被用者等は、次に掲げる債権について、この法律で定めるところにより、その責任を制限することができる。
一 船舶上で又は船舶の運航に直接関連して生ずる人の生命若しくは身体が害されることによる損害又は当該船舶以外の物の滅失若しくは損傷による損害に基づく債権
二 運送品、旅客又は手荷物の運送の遅延による損害に基づく債権
三 前二号に掲げる債権のほか、船舶の運航に直接関連して生ずる権利侵害による損害に基づく債権(当該船舶の滅失又は損傷による損害に基づく債権及び契約による債務の不履行による損害に基づく債権を除く。)
四 前条第二項第三号に掲げる措置により生ずる損害に基づく債権(当該船舶所有者等及びその被用者等が有する債権を除く。)
五 前条第二項第三号に掲げる措置に関する債権(当該船舶所有者等及びその被用者等が有する債権並びにこれらの者との契約に基づく報酬及び費用に関する債権を除く。)
2 救助者又はその被用者等は、次に掲げる債権について、この法律で定めるところにより、その責任を制限することができる。
一 救助活動に直接関連して生ずる人の生命若しくは身体が害されることによる損害又は当該救助者に係る救助船舶以外の物の滅失若しくは損傷による損害に基づく債権
二 前号に掲げる債権のほか、救助活動に直接関連して生ずる権利侵害による損害に基づく債権(当該救助者に係る救助船舶の滅失又は損傷による損害に基づく債権及び契約による債務の不履行による損害に基づく債権を除く。)
三 前条第二項第三号に掲げる措置により生ずる損害に基づく債権(当該救助者及びその被用者等が有する債権を除く。)
四 前条第二項第三号に掲げる措置に関する債権(当該救助者及びその被用者等が有する債権並びにこれらの者との契約に基づく報酬及び費用に関する債権を除く。)
3 船舶所有者等若しくは救助者又は被用者等は、前二項の債権が、自己の故意により、又は損害の発生のおそれがあることを認識しながらした自己の無謀な行為によつて生じた損害に関するものであるときは、前二項の規定にかかわらず、その責任を制限することができない。
4 船舶所有者等又はその被用者等は、旅客の損害に関する債権については、第一項の規定にかかわらず、その責任を制限することができない。
(責任の制限の及ぶ範囲)
第六条 船舶所有者等又はその被用者等がする責任の制限は、船舶ごとに、同一の事故から生じたこれらの者に対するすべての人の損害に関する債権及び物の損害に関する債権に及ぶ。
2 救助船舶に係る救助者若しくは当該救助船舶の船舶所有者等又はこれらの被用者等がする責任の制限は、救助船舶ごとに、同一の事故から生じたこれらの者に対するすべての人の損害に関する債権及び物の損害に関する債権に及ぶ。
3 前項の救助者以外の救助者又はその被用者等がする責任の制限は、救助者ごとに、同一の事故から生じたこれらの者に対するすべての人の損害に関する債権及び物の損害に関する債権に及ぶ。
4 前三項の責任の制限が物の損害に関する債権のみについてするものであるときは、その責任の制限は、前三項の規定にかかわらず、人の損害に関する債権に及ばない。
(責任の限度額等)
第七条 前条第一項又は第二項に規定する責任の制限の場合における責任の限度額は、次のとおりとする。
一 責任を制限しようとする債権が物の損害に関する債権のみである場合においては、船舶のトン数に応じて、次に定めるところにより算出した金額。ただし、百トンに満たない木船については、一単位の五十万七千三百六十倍の金額とする。
イ 二千トン以下の船舶にあつては、一単位の百五十一万倍の金額
ロ 二千トンを超える船舶にあつては、イの金額に、二千トンを超え三万トンまでの部分については一トンにつき一単位の六百四倍を、三万トンを超え七万トンまでの部分については一トンにつき一単位の四百五十三倍を、七万トンを超える部分については一トンにつき一単位の三百二倍を乗じて得た金額を加えた金額
二 その他の場合においては、船舶のトン数に応じて、次に定めるところにより算出した金額
イ 二千トン以下の船舶にあつては、一単位の四百五十三万倍の金額
ロ 二千トンを超える船舶にあつては、イの金額に、二千トンを超え三万トンまでの部分については一トンにつき一単位の千八百十二倍を、三万トンを超え七万トンまでの部分については一トンにつき一単位の千三百五十九倍を、七万トンを超える部分については一トンにつき一単位の九百六倍を乗じて得た金額を加えた金額
2 前項第二号に規定する場合においては、制限債権の弁済に充てられる金額のうち、その金額に同項第一号に掲げる金額(百トンに満たない木船については、同号イの金額)の同項第二号に掲げる金額に対する割合を乗じて得た金額に相当する部分は物の損害に関する債権の弁済に、その余の部分は人の損害に関する債権の弁済に、それぞれ充てられるものとする。ただし、後者の部分が人の損害に関する債権を弁済するに足りないときは、前者の部分は、その弁済されない残額と物の損害に関する債権の額との割合に応じてこれらの債権の弁済に充てられるものとする。
3 前条第三項に規定する責任の制限の場合における責任の限度額は、次のとおりとする。
一 責任を制限しようとする債権が物の損害に関する債権のみである場合においては、一単位の百五十一万倍の金額
二 その他の場合においては、一単位の四百五十三万倍の金額
4 第二項の規定は、前項第二号に規定する場合について準用する。
5 制限債権者は、その制限債権の額の割合に応じて弁済を受ける。