兵庫県商工会連合会・退職勧奨・パワハラ
損害賠償請求事件
【事件番号】 神戸地方裁判所姫路支部判決/平成23年(ワ)第650号
【判決日付】 平成24年10月29日
【判示事項】 1 退職勧奨は,労働者の自発的な退職意思を形成する本来の目的実現のために社会通念上相当と認められる程度を超えて,当該労働者に対して不当な心理的圧力を加えたり,または,その名誉感情を不当に害するような言辞を用いることによって,その自由な退職意思の形成を妨げることは許されず,そのようなことがされた場合には,不法行為を構成するとされた例
2 原告Xが拒否の姿勢を明確にしているにもかかわらず繰り返し行われ,「自分で行き先を探してこい」,「管理職の構想から外れている」,「ラーメン屋でもしたらどうや」,「管理者としても不適格である」,「商工会の権威を失墜させている」等の言辞を用いて行われた本件退職勧奨が違法であるとされた例
3 転籍命令は,業務上の必要性が存しない場合,または業務上の必要性が存する場合であっても,当該転籍命令が他の不当な動機・目的をもってなされたものであるとき,もしくは労働者に対し通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものであるとき等,特段の事情の存する場合には,権利の濫用として違法になるとされた例
4 被告Y2が,転籍前に不法行為に当たる退職勧奨を行い,Xの単身赴任手当の支給に必要な手続きをとらない等,Xに対する嫌がらせとしかいいようがない言動がなされていることから,本件転籍命令が違法であるとされた例
5 出向命令は,使用者の経営判断が合理的といえるかどうか,労働者が著しい不利益を受けるかどうか,出向命令の発令に至る手続きに不相当な点があるかどうか,違法・不当な動機・目的に基づくものであるかどうか等の諸事情を勘案して,権利を濫用したものといえるときには違法となるとされた例
6 期間(5年),賃金(管理職手当不支給),通勤時間(片道約2時間半)において,Xには不利益があり,管理職手当不支給について被告Y1県連が事前に調査・把握しておらず,退職勧奨拒否後のXの職務を確保するための努力に疑問があり,Y1県連が出向直前に,Xに対して執拗な退職勧奨を行っていたことから,本件出向命令は違法であるとされた例
7 長期間の療養休暇からの復帰後における総務課長としての職務遂行に不安があり,総務課長職での復職(ならし運転)が事務処理上困難であり,補助金によって運営されているD市商工会が復帰できるか分からないXに従前どおりの給与の支給を継続するのは困難であったと考えられるのであるから,本件降格に伴う減額措置は,給与規程にいう「前項の規定により,職員の号給を決定することが著しく不適当である」場合に当たるとして,減額措置は違法であるとはいえないとされた例
8 Y1県連らが不法行為責任を負うのは,出向先である単位商工会の違法な給料減額措置に積極的に関与したり,事前に単位商工会において明白に違法な給料減額措置がなされることを把握しながら,これを漫然と放置したような場合に限られるとして,Y1県連およびY2の不法行為責任が否定された例
【掲載誌】 労働判例1066号28頁
労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律
第九章 職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して事業主の講ずべき措置等
(雇用管理上の措置等)
第三十条の二 事業主は、職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であつて、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものによりその雇用する労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。
2 事業主は、労働者が前項の相談を行つたこと又は事業主による当該相談への対応に協力した際に事実を述べたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。
3 厚生労働大臣は、前二項の規定に基づき事業主が講ずべき措置等に関して、その適切かつ有効な実施を図るために必要な指針(以下この条において「指針」という。)を定めるものとする。
4 厚生労働大臣は、指針を定めるに当たつては、あらかじめ、労働政策審議会の意見を聴くものとする。
5 厚生労働大臣は、指針を定めたときは、遅滞なく、これを公表するものとする。
6 前二項の規定は、指針の変更について準用する。