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2023年11月05日
世紀東急工業事件・価格カルテルの課徴金と取締役の会社に対する責任

世紀東急工業事件・価格カルテルの課徴金と取締役の会社に対する責任

 

 

損害賠償請求(株主代表訴訟)事件

【事件番号】      東京地方裁判所判決/令和2年(ワ)第32120号

【判決日付】      令和4年3月28日

【掲載誌】        LLI/DB 判例秘書登載

【評釈論文】      ジュリスト1576号6頁

 

 

会社法

(役員等の株式会社に対する損害賠償責任)

第四百二十三条 取締役、会計参与、監査役、執行役又は会計監査人(以下この章において「役員等」という。)は、その任務を怠ったときは、株式会社に対し、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

2 取締役又は執行役が第三百五十六条第一項(第四百十九条第二項において準用する場合を含む。以下この項において同じ。)の規定に違反して第三百五十六条第一項第一号の取引をしたときは、当該取引によって取締役、執行役又は第三者が得た利益の額は、前項の損害の額と推定する。

3 第三百五十六条第一項第二号又は第三号(これらの規定を第四百十九条第二項において準用する場合を含む。)の取引によって株式会社に損害が生じたときは、次に掲げる取締役又は執行役は、その任務を怠ったものと推定する。

一 第三百五十六条第一項(第四百十九条第二項において準用する場合を含む。)の取締役又は執行役

二 株式会社が当該取引をすることを決定した取締役又は執行役

三 当該取引に関する取締役会の承認の決議に賛成した取締役(指名委員会等設置会社においては、当該取引が指名委員会等設置会社と取締役との間の取引又は指名委員会等設置会社と取締役との利益が相反する取引である場合に限る。)

4 前項の規定は、第三百五十六条第一項第二号又は第三号に掲げる場合において、同項の取締役(監査等委員であるものを除く。)が当該取引につき監査等委員会の承認を受けたときは、適用しない。

 

(株主による責任追及等の訴え)

第八百四十七条 六箇月(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前から引き続き株式を有する株主(第百八十九条第二項の定款の定めによりその権利を行使することができない単元未満株主を除く。)は、株式会社に対し、書面その他の法務省令で定める方法により、発起人、設立時取締役、設立時監査役、役員等(第四百二十三条第一項に規定する役員等をいう。)若しくは清算人(以下この節において「発起人等」という。)の責任を追及する訴え、第百二条の二第一項、第二百十二条第一項若しくは第二百八十五条第一項の規定による支払を求める訴え、第百二十条第三項の利益の返還を求める訴え又は第二百十三条の二第一項若しくは第二百八十六条の二第一項の規定による支払若しくは給付を求める訴え(以下この節において「責任追及等の訴え」という。)の提起を請求することができる。ただし、責任追及等の訴えが当該株主若しくは第三者の不正な利益を図り又は当該株式会社に損害を加えることを目的とする場合は、この限りでない。

2 公開会社でない株式会社における前項の規定の適用については、同項中「六箇月(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前から引き続き株式を有する株主」とあるのは、「株主」とする。

3 株式会社が第一項の規定による請求の日から六十日以内に責任追及等の訴えを提起しないときは、当該請求をした株主は、株式会社のために、責任追及等の訴えを提起することができる。

4 株式会社は、第一項の規定による請求の日から六十日以内に責任追及等の訴えを提起しない場合において、当該請求をした株主又は同項の発起人等から請求を受けたときは、当該請求をした者に対し、遅滞なく、責任追及等の訴えを提起しない理由を書面その他の法務省令で定める方法により通知しなければならない。

5 第一項及び第三項の規定にかかわらず、同項の期間の経過により株式会社に回復することができない損害が生ずるおそれがある場合には、第一項の株主は、株式会社のために、直ちに責任追及等の訴えを提起することができる。ただし、同項ただし書に規定する場合は、この限りでない。

 

 

 

       主   文

 

 1 被告Y1は、A株式会社に対し、18億3417万円及びこれに対する令和3年1月10日から支払済みまで年3分の割合による金員(ただし、17億3227万円及びこれに対する同月12日から支払済みまで年3分の割合による金員の限度で被告Y2と、15億7942万円及びこれに対する同月13日から支払済みまで年3分の割合による金員の限度で被告Y3及び被告Y4とそれぞれ連帯して)を支払え。

 2 被告Y2は、A株式会社に対し、17億3227万円及びこれに対する令和3年1月12日から支払済みまで年3分の割合による金員(ただし、同額の限度で被告Y1と、15億7942万円及びこれに対する同月13日から支払済みまで年3分の割合による金員の限度で被告Y3及び被告Y4とそれぞれ連帯して)を支払え。

 3 被告Y3及び被告Y4は、A株式会社に対し、被告Y1及び被告Y2と連帯して、15億7942万円及びこれに対する令和3年1月13日から支払済みまで年3分の割合による金員を支払え。

 4 訴訟費用は、被告らの負担とする。

 5 この判決は、1項ないし3項に限り、仮に執行することができる。

 

       事実及び理由

 

第1 請求

   主文1項ないし3項同旨

第2 事案の概要

   本件は、A株式会社(以下「A」という。)の株主である原告が、Aにおいて遅くとも平成23年3月から平成27年1月27日までの間、同業他社8社との間で共同してアスファルト合材(以下「合材」という。)の販売価格の引上げを行っていく旨を合意(以下「本件合意」という。)することにより、公共の利益に反して、我が国における合材の販売分野における競争を実質的に制限していた行為(本件合意に基づき上記引上げを行っていた行為であり、以下「本件違反行為」という。)が私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下「独禁法」という。)2条6項に規定する不当な取引制限に該当し、独禁法3条の規定に違反するなどとして、公正取引委員会から排除措置命令及び課徴金納付命令を受けたことについて、当時の取締役又は代表取締役であった被告らに善管注意義務違反があったと主張して、被告らに対し、会社法423条1項に基づく損害賠償請求として、Aが上記課徴金納付命令に基づき納付した課徴金のうち、被告Y1につき18億3417万円、被告Y2につき17億3227万円、被告Y3及び被告Y4につき15億7942万円及び各損害金に対する各訴状送達の日の翌日から支払済みまで民法所定の年3分の割合による遅延損害金を、各被告の上記責任金額の限度で連帯して支払うよう求める事案である。

 

 

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