加治川水害訴訟事件
最高裁判所第1小法廷判決/昭和57年(オ)第560号
昭和60年3月28日
損害賠償請求事件
【判示事項】 洪水により決壊した堤防の背後に設置された仮堤防につき河川管理の瑕疵がないとされた事例
【判決要旨】 洪水により決壊した堤防の背後に設置された仮堤防が約1年後に前年をはるかに上回る豪雨のため破堤したとしても、その設置に当たりかかる連年の災害を受ける危険を予測しなかったことに無理からぬ事情があり、右仮堤防が本堤防完成までの2年間の出水に対処する目的で応急対策として短期間に築造された仮の施設であって、その築堤材料に砂丘砂を単一使用したこと及び築堤材料の点を除く断面・構造を決壊した堤防と同じくしたことにつき、過去の水害の発生状況、仮堤防の存置期間等から予測しうべき水害についてはその発生を防止して背後地の安全を確保したものとして、時間的、財政的及び技術的制約のもとでの同種・同規模の河川に同趣旨で設置する仮堤防の設計施工上の一般水準ないし社会通念に照らして是認することができるときは、その断面・構造に河川管理の瑕疵があるとはいえない。
【参照条文】 国家賠償法2-1
【掲載誌】 最高裁判所民事判例集39巻2号333頁