第23章 事業者の努力義務の明示
1 解釈に疑義が生じないよう配慮する義務
実際に使用されている消費者契約の条項の中には、例えば、単にAとBを読点で結んだだけで、「AかつB」とも「A又はB」とも解釈することができる条項など、不明確な条項が見受けられます。
改正法は、「事業者は、消費者契約の条項を定めるに当たっては、消費者の権利義務その他の消費者契約の内容が消費者にとって明確かつ平易なものになるよう配慮する」よう努めなければならないことを規定した部分を改正し、「条項の解釈について疑義が生じない明確なもので、かつ、消費者にとって平易なものになるよう配慮する」よう努めなれければならないことを明らかにしました(改正法3条1項1号)。
2 事業者の努力義務の明示(3条1項)
事業者の努力義務として、契約条項を作成するに当たって契約内容について解釈に疑義が生じない明確なものとするよう配慮すべきことと、消費者契約の勧誘に際しては消費者契約の目的となるものの性質に応じて個々の消費者の知識および経験を考慮したうえで必要な情報を提供すべきことが定められました。
3 事業者の努力義務内容の明確化、具体化
情報提供の在り方は個別の消費者が契約内容等をどの程度理解しているのかによって変わり得るものですので、事業者の消費者に対する情報提供は、個別の消費者の事情についても考慮した上で実質的に行われるべきものです。改正前の消費契約法第3条第1項の規定からは、上記の点が必ずしも明らかではないことから、法文上で明示することとしました(改正法3条1項2号)。
改正法では、消費者と事業者との間には情報力や交渉力の格差があること、また知識や経験は消費者によって様々であることを踏まえた事業者の努力義務が追加されました。具体的には、①事業者は、契約条項を作成するにあたり、その解釈について疑義が生じない明確なもので、かつ平易なものとなるよう努めること、②事業者は、契約の目的となるものの性質に応じ、個々の消費者の知識・経験を考慮した上で必要な情報の提供に努めること、とされています(改正法3条1項)。
なお、『消費者法判例百選』(有斐閣、令和2年)32事件の解説も参照。