第6章 内部統制システムに関する改正
「当該株式会社及びその子会社から成る企業集団の業務の適正」を確保するための体制の整備を、従来は会社法施行規則で定めていましたが、改正により会社法においても規定されています(会362条第4項6号)。
一方で、会社法施行規則では、グループ内部統制に関して、追加で子会社に関する事項を具体的に定めています。
また、監査役監査の実効性確保の点から、監査役の監査体制に関する事項も追加で定めています。
その上で、内部統制システムの運用状況の概要を事業報告へ記載することが求められています。すなわち、内部統制システムの基本方針の決議の内容の概要に加え、「当該体制の運用状況の概要」を事業報告の内容として開示することが求められています(施行規則118条2号)。
大会社である取締役設置会社は、取締役の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制その他株式会社の業務並びに当該株式会社及びその子会社から成る企業集団の業務の適正を確保するための体制を決定しなければなりません(348条第3項4号、362条第4項6号、第5項)。
なお、大会社以外でも当該事項について決定した会社であれば、事業報告への記載が必要となります。
※当該体制の運用状況の概要は、「各社の状況に応じた合理的な記載をすることで足りるが、客観的な運用状況を意味するものであり、運用状況の評価の記載を求めるものではない。ただし事業報告に運用状況の評価を記載することも妨げられない。」とされています(2015年4月10日 一般社団法人日本経済団体連合会 経済法規委員会企画部会)。
取締役会設置会社において決定すべき体制の内容は、以下のとおりです(施行規則100条第1項)。
取締役の職務の執行に係る情報の保存および管理に関する体制
損失の危険の管理に関する規程その他の体制
取締役の職務の執行が効率的に行われることを確保するための体制
使用人の職務の執行が法令および定款に適合することを確保するための体制
当該株式会社ならびにその親会社および子会社から成る企業集団における業務の適正を確保するための体制
ア 子会社の取締役等の業務の執行に係る事項の当該株式会社への報告に関する体制
イ 子会社の損失の危険の管理に関する規程その他の体制
ウ 子会社の取締役等の職務の執行が効率的に行われることを確保するための体制
エ 子会社の取締役等及び使用人の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制
さらに、監査役設置会社である場合には、以下の体制が必要です(施行規則100条第3項)。
監査役がその職務を補助すべき使用人を置くことを求めた場合における当該使用人に関する事項(注)
使用人に対する指示の実効性の確保に関する事項
監査役への報告に関する体制
ア 取締役及び会計参与並びに使用人が監査役に報告するための体制
イ 子会社の取締役等または取締役等から報告を受けた者が監査役に報告するための体制
監査役に報告した者が不利な扱いを受けないことを確保するための体制
監査に要する費用の処理に係る方針に関する事項
その他監査役の監査が実効的に行われることを確保するための体制
(注)監査役による監査体制の構築についても、会社の業務の適正を確保する体制の一部である以上、あくまで当該体制の構築義務は取締役が負います。ただし、実際の監査体制は、監査役の主導で行うべきですので、補助使用人の要否は第一義的には監査役が判断することになります。
平成26年改正前の会社法では、「当該株式会社及びその子会社から成る企業集団の業務の適正」を確保するための体制の整備を、従来は会社法施行規則で定めていましたが、改正により会社法施行規則から会社法に格上げされて規定されています。
また、会社法施行規則において、グループ内部統制についてより具体的な内容が定められ、監査役監査の体制についても具体的な内容が定められています。そして、その運用状況の概要を事業報告書に記載することになります。