海難における救援救助についての規定の統一に関する条約(大正3年条約第2号)に基づく海難救助料請求権と救援救助義務
最高裁判所第1小法廷判決/昭和47年(オ)第1236号
昭和49年9月26日
海難救助料請求権確認請求事件
【判示事項】 一、海難における救援救助についての規定の統一に関する条約(大正3年条約第2号)に基づく海難救助料請求権と救援救助義務
ニ、曳船の所有者が被曳船の海難につき曳船契約上負担すべき救援救助義務
三、曳船契約履行中被曳船の海難に対し曳船の船長及び海員のした救援救助行為につき曳船の船長の海難救助料請求が否定された事例
【判決要旨】 一、海難における救援救助についての規定の統一に関する条約(大正3年条約第2号)に基づく海難救助料請求権が発生するためには、海難に対する救援救助行為が義務なくしてされたものでなければならない。
ニ、曳船の所有者は、曳船契約履行中、被曳船が通常生ずるとはいえない事故により海難におちいった場合においても、曳船に急迫な危険が存しないかぎり、原則として、被曳船の海難につき信義則上相当と認められる程度の適切な処置を取るべき契約上の義務を負担する。
三、独力による航行能力がなく、その乗組員は曳航中曳船の船長の指揮命令下にある被曳船が、その船底に生じた約2.5センチメールの亀裂によって浸水し、そのまま放置していたのでは沈没を免れない危険におちいった場合において、曳船の船長が直ちに最寄りの港へ転進するとともに、曳船に備え付けられた排水用ポンプを被曳船に送り込み、被曳船の乗組員に指示して排水作業を継続させるなど曳船の船長及び海員のした判示のような救援救助行為につき、曳船の船長は、海難救助料を請求することができない。
【参照条文】 商法800
海難における救援救助についての規定の統一に関する条約(大正3年条約第2号)2-1
民法1-2
海難における救援救助についての規定の統一に関する条約(大正3年条約第2号)4
【掲載誌】 最高裁判所民事判例集28巻6号1331頁