村長の借入金受領と消費貸借の成否
貸金請求事件
【事件番号】 最高裁判所第3小法廷判決/昭和30年(オ)第873号
【判決日付】 昭和34年7月14日
【判示事項】 1、村長の借入金受領と消費貸借の成否
2、村長の借入金受領行為と民法第110条の類推適用
3、民法第110条所定の代理権ありと信ずべき正当の理由があつたとの判断が違法とされた事例
【判決要旨】 1、現金出納の権限のない、村長が村の名において他人より金員を借り入れ、これをみずから受領したにとどまる場合は、右金員の借入が村議会の決議に基いてもその他人と村との間には右金員の消費貸借は成立しない。
2、右の場合、村につき民法第110条所定の「代理人カ其権限外ノ行為ヲ為シタル場合」に該当するものとして、同条の類推適用によりその責任を認めるのが相当である。
3、1の場合、村長がたんに村上席書記を帯同のうえ、貸主に前記決議書抄本を呈示した事実のみから、ただちに貸主が村長に借入金受領の権限があると信ずべき正当の理由があつたと断ずるのは違法である。
【参照条文】 地方自治法149
地方自治法170
民法587
民法110
【掲載誌】 最高裁判所民事判例集13巻7号960頁
要約
村の収入役、会計責任者の同席が必要である。
民法
(代理権授与の表示による表見代理等)
第百九条 第三者に対して他人に代理権を与えた旨を表示した者は、その代理権の範囲内においてその他人が第三者との間でした行為について、その責任を負う。ただし、第三者が、その他人が代理権を与えられていないことを知り、又は過失によって知らなかったときは、この限りでない。
2 第三者に対して他人に代理権を与えた旨を表示した者は、その代理権の範囲内においてその他人が第三者との間で行為をしたとすれば前項の規定によりその責任を負うべき場合において、その他人が第三者との間でその代理権の範囲外の行為をしたときは、第三者がその行為についてその他人の代理権があると信ずべき正当な理由があるときに限り、その行為についての責任を負う。
(権限外の行為の表見代理)
第百十条 前条第一項本文の規定は、代理人がその権限外の行為をした場合において、第三者が代理人の権限があると信ずべき正当な理由があるときについて準用する。
第五節 消費貸借
(消費貸借)
第五百八十七条 消費貸借は、当事者の一方が種類、品質及び数量の同じ物をもって返還をすることを約して相手方から金銭その他の物を受け取ることによって、その効力を生ずる。
昭和二十二年法律第六十七号
地方自治法
第二款 権限
第百四十七条 普通地方公共団体の長は、当該普通地方公共団体を統轄し、これを代表する。
第百四十八条 普通地方公共団体の長は、当該普通地方公共団体の事務を管理し及びこれを執行する。
第百四十九条 普通地方公共団体の長は、概ね左に掲げる事務を担任する。
一 普通地方公共団体の議会の議決を経べき事件につきその議案を提出すること。
二 予算を調製し、及びこれを執行すること。
三 地方税を賦課徴収し、分担金、使用料、加入金又は手数料を徴収し、及び過料を科すること。
四 決算を普通地方公共団体の議会の認定に付すること。
五 会計を監督すること。
六 財産を取得し、管理し、及び処分すること。
七 公の施設を設置し、管理し、及び廃止すること。
八 証書及び公文書類を保管すること。
九 前各号に定めるものを除く外、当該普通地方公共団体の事務を執行すること。
第百七十条 法律又はこれに基づく政令に特別の定めがあるものを除くほか、会計管理者は、当該普通地方公共団体の会計事務をつかさどる。
② 前項の会計事務を例示すると、おおむね次のとおりである。
一 現金(現金に代えて納付される証券及び基金に属する現金を含む。)の出納及び保管を行うこと。
二 小切手を振り出すこと。
三 有価証券(公有財産又は基金に属するものを含む。)の出納及び保管を行うこと。
四 物品(基金に属する動産を含む。)の出納及び保管(使用中の物品に係る保管を除く。)を行うこと。
五 現金及び財産の記録管理を行うこと。
六 支出負担行為に関する確認を行うこと。
七 決算を調製し、これを普通地方公共団体の長に提出すること。
③ 普通地方公共団体の長は、会計管理者に事故がある場合において必要があるときは、当該普通地方公共団体の長の補助機関である職員にその事務を代理させることができる。