第16章 会社分割等における債権者の保護
(1) 分割会社に知れていない債権者の保護
会社分割に異議を述べることができる吸収分割会社又は新設分割会社(分割会社)の債権者であって、各別の催告を受けなかったもの(分割会社が官報公告に加え日刊新聞紙に掲載する方法又は電子公告による公告を行う場合にあっては、不法行為によって生じた債務の債権者であるものに限る。)は、吸収分割契約又は新設分割計画において会社分割後に分割会社又は承継会社等(吸収分割承継会社又は新設分割設立会社をいう。)のいずれか一方に対してしか債務の履行を請求することができないものとされているときであっても、分割会社及び承継会社等の双方に対して、分割会社が会社分割の効力が生じた日に有していた財産の価額又は承継会社等が承継した財産の価額を限度として、当該債務の履行を請求することができる。(第759条第2項・第3項、第761条第2項・第3項、第764条第2項・第3項、第766条第2項・第3項関係)
詐害的会社分割とは、分割会社が,承継会社に債務の履行の請求をすることができる債権者(承継債権者)と,当該請求をすることができない債権者(残存債権者)を恣意的に選別した上で,承継会社に優良事業や資産を承継させるなどする会社分割をいいます。
詐害的会社分割が行われた場合に,残存債権者の保護を直接的かつ簡明に図るために,分割会社が残存債権者を害することを知って会社分割をした場合には,残存債権者は,承継会社等に対して,承継した財産の価額を限度として,債務の履行を請求することができることとされました。
分割会社が、承継会社に承継されない債務の債権者(残存債権者)を害することを知って会社分割をした場合には、残存債権者は承継会社等に対して、承継した財産の価額を限度として、当該債務の履行を請求することができるようになりました(759条第4項、761条第4項)。これは、承継会社に債務の履行を請求できる債権者と請求できない債権者を恣意的に選別した上で、承継会社に優良事業や資産を承継させるといった会社分割が行われた場合に、残存債権者を保護するための規定です。
(2) 事業譲渡についても、上記と同様の規定を設ける。(第23条の2関係)