交通事故・相続・債権回収でお困りの方はお気軽にご相談下さい

法律相談のご予約・お問い合わせはこちらまで03−6904−7423
新着情報
2023年12月09日
会社法の平成26年改正その18 第18章 特別支配株主の株式等売渡請求

第18章 特別支配株主の株式等売渡請求

 (1) 株式等売渡請求

  株式会社の総株主の議決権の10分の9以上を有する特別支配株主は、当該株式会社(対象会社)の株主(売渡株主)の全員に対し、その有する対象会社の株式(売渡株式)の全部を当該特別支配株主に売り渡すことを請求すること(株式売渡請求)ができる。

特別支配株主は、株式売渡請求をするときは、併せて、対象会社の新株予約権者(売渡新株予約権者)の全員に対し、その有する対象会社の新株予約権の全部を当該特別支配株主に売り渡すことを請求すること(新株予約権売渡請求)ができる。(第179条関係)

 

 従来も、全部取得条項付株式の取得や端株の買取請求等を利用して、キャッシュ・アウトを行うことができましたが、手続きとして株主総会の特別決議が求められているため、キャッシュ・アウトを完了するまで長期間を要し、時間的・手続的コストがかかっていました。そこで、このような時間的・手続的コストを軽減するため、改正により新たに特別支配株主による株式売渡請求の制度が設けられました。

 

一方で、非支配株主保護の観点から、全部取得条項付株式の取得差止請求(会171条の3)、株式の併合により端数となる株式について公正な価格での買取請求(会182条の4)や株式併合の差止請求(会182条の3)、そして、これらの事前や事後の開示(171条の2、173条の2、会182条の2、会182条の6)等の改正が行われています。

 

 (2) 株式等売渡請求の方法

 

 株式等売渡請求は、売渡株主に対して売渡株式の対価として交付する金銭の額等を定めてしなければならない。(第179条の2関係)

 

 (3) 対象会社の承認

 

  特別支配株主は、株式等売渡請求をしようとするときは、対象会社に対し、その旨並びに売渡株式の対価として交付する金銭の額等を通知し、その承認を受けなければならない。取締役会設置会社が当該承認をするか否かの決定をするには、取締役会の決議によらなければならない。(第179条の3関係)

 

 (4) 売渡株主等に対する通知等

 

  ① 対象会社は、株式等売渡請求の承認をしたときは、取得日の20日前までに、売渡株主及び売渡新株予約権者(売渡株主等)に対し、当該承認をした旨、特別支配株主の氏名又は名称及び住所、売渡株式の対価として交付する金銭の額等を通知するとともに、売渡株式の登録株式質権者等に対し、当該承認をした旨を通知しなければならない。この通知(売渡株主に対してするものを除く。)は、公告をもってこれに代えることができる。(第179条の4第1項・第2項関係)

 

  ② 対象会社が①の通知又は公告をしたときは、特別支配株主から売渡株主等に対し、株式等売渡請求がされたものとみなす。(第179条の4第3項関係)

 

 (5) 株式等売渡請求に関する書面等の備置き及び閲覧等

 

  対象会社は、売渡株主等に対する通知の日又は公告の日のいずれか早い日から取得日後6箇月(対象会社が公開会社でない場合にあっては、取得日後1年)を経過する日までの間、特別支配株主の氏名又は名称及び住所、売渡株式の対価として交付する金銭の額等を記載した書面等を本店に備え置かなければならない。売渡株主等は、当該書面等の閲覧等の請求をすることができる。(第179条の5関係)

 

 (6) 株式等売渡請求の撤回

 

  特別支配株主は、対象会社の承認を受けた後は、取得日の前日までに対象会社の承諾を得た場合に限り、株式等売渡請求を撤回することができる。取締役会設置会社が当該承諾をするか否かの決定をするには、取締役会の決議によらなければならない。(第179条の6関係)

 

 (7) 売渡株式等の取得をやめることの請求

 

  株式売渡請求が法令に違反する場合等において、売渡株主が不利益を受けるおそれがあるときは、売渡株主は、特別支配株主に対し、株式等売渡請求に係る売渡株式等の全部の取得をやめることを請求することができる。新株予約権売渡請求が法令に違反する場合等において、売渡新株予約権者が不利益を受けるおそれがあるときは、売渡新株予約権者は、同様の請求をすることができる。(第179条の7関係)

 

 (8) 売買価格の決定の申立て

 

  株式等売渡請求があった場合には、売渡株主等は、取得日の20日前の日から取得日の前日までの間に、裁判所に対し、売渡株式等の売買価格の決定の申立てをすることができる。(第179条の8関係)

 

 (9) 売渡株式等の取得

 

  株式等売渡請求をした特別支配株主は、取得日に、売渡株式等の全部を取得する。(第179条の9関係)

 

 (10) 売渡株式等の取得に関する書面等の備置き及び閲覧等

 

  対象会社は、取得日後遅滞なく、株式等売渡請求により特別支配株主が取得した売渡株式等の数等を記載した書面等を作成し、取得日から6箇月間(対象会社が公開会社でない場合にあっては、取得日から1年間)、本店に備え置かなければならない。取得日に売渡株主等であった者は、当該書面等の閲覧等の請求をすることができる。(第179条の10関係)

 

 (11) 売渡株式等の取得の無効の訴え

 

  株式等売渡請求に係る売渡株式等の全部の取得の無効は、取得日から6箇月以内(対象会社が公開会社でない場合にあっては、当該取得日から1年以内)に、訴えをもってのみ主張することができる。(第846条の2~第846条の9関係)

 

 

top

法律相談のご予約・お問い合わせはこちらまで03−6904−7423