預合罪および応預合罪
テーマ:会社法
商法違反、公正証書原本不実記載、同行使被告事件
【事件番号】 最高裁判所第1小法廷判決/昭和41年(あ)第961号
【判決日付】 昭和42年12月14日
【判示事項】 預合罪および応預合罪の成否
【判決要旨】 増資にあたり、株式引受人の会社に対する債権が真実に存在し、かつこれを弁済する資力が会社にある場合には、会社が株式払込取扱銀行から金融を受けて株式引受人に対する債務を弁済し株式引受人が右弁済金を引受株式の払込金に充当するという払込方法がとられたとしても、直ちに商法第491条の預合罪および応預合罪が成立するとはいえない。
【参照条文】 商法491
【掲載誌】 最高裁判所刑事判例集21巻10号1369頁
「思うに、形式的に帳簿上の操作をすることによつて容易に払込の仮装が行われうることにかんがみると、払込が実質的になされたか否かについてはきわめて慎重に審理することを要し、帳簿上の操作に惑わされるべきでないことはもちろんであるが、しかし、株式引受人の会社に対する債権が真実に存在し、かつ会社にこれを弁済する資力がある場合には、右弁護人主張のような態様の払込方法をとつたとしても、資本充実の原則に反するものではなく、株金払込仮装行為とはいえないから、商法四九一条の預合罪および応預合罪にあたらないものと解するのを相当とする。」
預合とは
発起人が払込取扱金融機関から金銭を借入れ、これを設立後の会社の預金に振り替えて株式の払込みに充てるが、その借入金を返済するまでは、その預金を引き出さないことを約束するものをいう。
会社法
(出資の履行を仮装した場合の責任等)
第五十二条の二 発起人は、次の各号に掲げる場合には、株式会社に対し、当該各号に定める行為をする義務を負う。
一 第三十四条第一項の規定による払込みを仮装した場合 払込みを仮装した出資に係る金銭の全額の支払
二 第三十四条第一項の規定による給付を仮装した場合 給付を仮装した出資に係る金銭以外の財産の全部の給付(株式会社が当該給付に代えて当該財産の価額に相当する金銭の支払を請求した場合にあっては、当該金銭の全額の支払)
2 前項各号に掲げる場合には、発起人がその出資の履行を仮装することに関与した発起人又は設立時取締役として法務省令で定める者は、株式会社に対し、当該各号に規定する支払をする義務を負う。ただし、その者(当該出資の履行を仮装したものを除く。)がその職務を行うについて注意を怠らなかったことを証明した場合は、この限りでない。
3 発起人が第一項各号に規定する支払をする義務を負う場合において、前項に規定する者が同項の義務を負うときは、これらの者は、連帯債務者とする。
4 発起人は、第一項各号に掲げる場合には、当該各号に定める支払若しくは給付又は第二項の規定による支払がされた後でなければ、出資の履行を仮装した設立時発行株式について、設立時株主(第六十五条第一項に規定する設立時株主をいう。次項において同じ。)及び株主の権利を行使することができない。
5 前項の設立時発行株式又はその株主となる権利を譲り受けた者は、当該設立時発行株式についての設立時株主及び株主の権利を行使することができる。ただし、その者に悪意又は重大な過失があるときは、この限りでない。
(責任の免除)
第五十五条 第五十二条第一項の規定により発起人又は設立時取締役の負う義務、第五十二条の二第一項の規定により発起人の負う義務、同条第二項の規定により発起人又は設立時取締役の負う義務及び第五十三条第一項の規定により発起人、設立時取締役又は設立時監査役の負う責任は、総株主の同意がなければ、免除することができない。
罰則
(預合いの罪)
第九百六十五条 第九百六十条第一項第一号から第七号までに掲げる者が、株式の発行に係る払込みを仮装するため預合いを行ったときは、五年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。預合いに応じた者も、同様とする。