コンサルタントXを裁量労働制裁量労働制の適用から除外したY社の措置が,無効とされた事例
テーマ:解雇、退職、退職金
東京地方裁判所判決/平成27年(ワ)第1761号
平成28年10月7日
地位確認等請求事件
日立コンサルティング事件
【判示事項】 1 被告Y社就業規則所定の「故意または重大な過失により自己の権限外の行為をなし,または故なく業務に関する上長の指示に従わなかったとき」,「正当な理由なく,業務を阻害するような行為があったとき」,「会社または社内の個人に対して中傷誹謗して信用を失墜させ,または名誉棄損し,あるいは損害を与える等,当社社員としてあるまじき行為があったとき」に抵触するとしてなされた,原告Xのシニアコンサルタントからアナリストへの降格と年俸を20%減じる懲戒処分が,不当ではなく有効とされた例
2 Xを裁量労働制の適用から除外したY社の措置が,Xの反対にもかかわらず,Y社のみの意思により労働条件を変更する十分な労働契約上の根拠を認めることはできず,「健康及び福祉のための措置」として合理的なものであるともいえないとして,法的に有効なものと認めることはできないとされた例
3 Xの一連の不良な言動は軽視できない程度のもので,Y社はこれを強く問題視しており,降格後も改善の兆しはなかったこと,Y社がXによる偽装請負申告をしたことを把握した日からXの解雇日まで2か月余り経過していることに照らすと,偽装請負申告,労使協定周知違反申告,顧客の業務情報の取扱いに関する質問票および裁量労働制除外措置に関する事情がY社の本件解雇における決定的な動機であるとは認められず,本件解雇が労働者派遣法49条の3および労働基準法104条に違反する不利益取扱いに当たるとはいえないことから,本件解雇は客観的な合理的な理由を備え,社会通念上相当なものというべきであり,Xの雇用契約上の権利を有する地位の確認請求および雇用契約上の地位を前提とした賃金支払請求を認容することはできないとされた例
【掲載誌】 労働判例1155号54頁