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2023年12月20日
刑事訴訟法の司法取引その5 第5章 制度の趣旨・特徴

第5章 制度の趣旨・特徴

 いわゆる日本版司法取引とは、組織的な犯罪(企業の関わる経済犯罪等)の解明を目的として導入された捜査・公判協力型の協議・合意制度のことで、米国における同様の制度を参考に、平成28年の刑事訴訟法改正により新設されたものです。

 

 すなわち、協議・合意制度とは、被疑者や被告人(以下「被疑者等」)が、組織的な犯罪において中心的な役割を担った第三者(法文では「他人」という表現)の犯罪を明らかにするため、検察官等に対し、真実に合致する供述をしたり証拠を提出するという協力行為の見返りに、自分の起訴を見送ってもらったり(不起訴処分)、起訴された場合でも軽い求刑をしてもらったりできるようにする仕組みのことです。

 

 いわゆるリニア談合事件(独占禁止法違反:不当な取引制限の罪)(2018年3月23日、東京地検特捜部が、関与したゼネコン4社のうち、捜査に協力的だった2社の担当者2名については、逮捕せず起訴自体も見送りましたが、否認を続けていた他の2社の担当者2名は逮捕・勾留の上、起訴しました)は、協議・合意制度の適用事案ではありませんが、このように、捜査へ協力したかどうかで処分等にはっきり差が付けられたことは、この新たな制度の運用開始を見越したものではないかという見方もできます。

 

 この制度は、組織的な犯罪等における首謀者の関与状況を含めた事案の全容解明に役立つ証拠を獲得することを目的とするもので、一定の財政経済関係犯罪も対象とされていることから、企業活動にも大いに関わりがあります。たとえば、犯罪の実行犯である部下従業員から、企業の役員あるいは幹部職員等の上位者の関与を明らかにする「有罪証拠」(供述やその裏付け証拠)を効率的に獲得するということが想定されます。

 

 これまで、日本にはなかった制度です。実際に何の見返りもなしに他の共犯者の捜査・公判への協力を求めるのはとても難しいため、そこで、協力に対するインセンティブを与えたというのがこの制度です。大きな特徴は、あくまで「他人」の刑事事件の捜査・公判に協力するという点です。「自分」の罪を認める代わりに不起訴などを約束してもらうもの(「自己負罪型」)ではありません。アメリカでは両方認められていますが、日本では協力型だけが導入されたので、「日本版司法取引」といわれるわけです。独占禁止法上の課徴金減免制度(リーニエンシー)と似た制度だといえます。

 

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