M社セクハラ事件
テーマ:男女雇用均等法,育児介護休暇法
東京高等裁判所判決/平成24年(ネ)第1342号
平成24年8月29日
M社セクハラ事件
損害賠償請求控訴事件
【判示事項】 1 被控訴人Y2は控訴人Xに対して人事権を有する被控訴人Y1社の代表取締役であったのであるから,XはY2が訪問することを受け入れ,Y2の要求に応じて性行為を受け入れたことについては,それがXの望んだことではないことは明らかであり,Xは自分の置かれた立場を考えてやむなく受け入れたものと認めるのが相当であるから,XがY2の要求を拒絶することは不可能であったとまではいえないが,心理的に要求を拒絶することが困難な状況にあったものと認められ,Xが性行為を受け入れたからといって,Xの自由な意思に基づく同意があったと認めることはできないとされた例
2 当時置かれていたXとY2双方の立場を考慮すれば,Xの自由な意思に基づく同意があったと認めることはできず,Y1社の代表取締役であるという立場を利用してXとの性行為に及んだY2の行為は,Xの性的自由および人格権を侵害した違法な行為であり,Xに対する不法行為を構成するとされた例
3 Xは,平成19年12月中旬から20年2月までの間,被控訴人Y3と極めて親密な関係にあったと認められ,Xは,自由な意思に基づいて,Y3と性交渉を持ったものと認めるのが相当であるとされた例
4 Y1社会長戊村は,平成20年4月23日にC市内の百貨店の喫茶店で,対応策を協議するためのXとの2回目の面談を行った際,面談における戊村の発言中に,Xの心情を傷つけるものが含まれていたことがうかがわれるが,他の客には気付かれないような態様で発言されていること等に照らし,戊村の発言が,社会通念上許容される限度を超える違法なものであるとまではいえず,Xに対する不法行為を構成すると認めることはできないとされた例
5 Xのすべての請求を棄却した1審判決のうち,Y2の不法行為およびそれに関するY1社の使用者責任のみが認められ,Y1社とY2に対し,連帯して慰謝料300万円の支払いが命じられた例
【掲載誌】 労働判例1060号22頁