第8章 協力の内容
法律上は、「真実の供述」と「証拠の提出その他の必要な協力」と定められているだけで、どんな行為が「協力」と認められるかは検察官の裁量に委ねられます。内容が虚偽ではないことは当然としても、いくら役立つと思って必要な証拠を提供したとしても、真相解明にあまり役立たないものであれば、検察官は合意に応じてくれないでしょう。
この点に関し、真実の供述とは、客観的な事実関係に合致することではなく、自己の記憶に従った供述をすることを意味し、結果として誤りであることが後にわかったとしても、虚偽供述等処罰罪(刑事訴訟法350条の15)に問われることはありません。もっとも、実際には、客観的な裏付けもなく信用性があるかどうかもあやふやな供述では検察官と合意することは難しいので、弁護人と、十分協議し、信用性を確保するために考えられること(たとえば、「他人」が関与したとする供述内容の裏付けとなるメモ、手帳の記載、メールのやり取り等の客観的資料の確保、事情を知る関係者の特定など)をあらかじめ検討しておかなければなりません。
弁護人の関与
協議には被疑者等だけではなく弁護人も関与することが必要ですし、合意には弁護人の同意が不可欠です(刑事訴訟法350条の3、350条の4)。したがって、この制度において、弁護人の果たす役割は大きく、刑事実務に精通した弁護士の起用は非常に重要となります。