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2023年12月24日
化学工場の火災の際漏出したニッケルカーボニルの有毒ガスを消防隊員らが吸入し中毒を起こした事故につき、同工場の有機部長でニッケルカーボニルの漏洩による危険防止の職責があった者に過失がないとされた事例

化学工場の火災の際漏出したニッケルカーボニルの有毒ガスを消防隊員らが吸入し中毒を起こした事故につき、同工場の有機部長でニッケルカーボニルの漏洩による危険防止の職責があった者に過失がないとされた事例

 

名古屋地方裁判所判決/昭和45年(わ)第1069号

昭和50年3月31日

業務上過失傷害

【判示事項】    化学工場の火災の際漏出したニッケルカーボニルの有毒ガスを消防隊員らが吸入し中毒を起こした事故につき、同工場の有機部長でニッケルカーボニルの漏洩による危険防止の職責があった者に過失がないとされた事例

【判決要旨】    ニッケルカーボニルは、加熱すると急速に分解する性質を有する毒性の強い有機金属化合物であって、ニッケルカーボニル、又はそのガスに被毒すると、頭痛、嘔吐感、呼吸困難、肺水腫等の症状をもたらすものであり、被告人には職責上それによる事故を未然に防止すべき業務上の注意義務があるが、本件において右注意義務に基づき被告人がとるべき措置としては、被告人が被毒の危険があると判断した時期において、その地域内の消防隊員らに有毒ガスの発生のおそれを告げて、自ら危険性はほぼないものと判断する地点まで後退するよう指示することをもって足るから、被告人にその義務懈怠があったとはいえないし、また、当時の状況下においては、消防隊責任者に酸素呼吸器を装着して消火活動に従事させるよう連絡指示する義務及び火災の勢いを早期に衰退させるため、部下に対し、反応装置内の反応液を地下収納槽に安全に収納させる可能性もなかったから、被告人に過失があったとはいえない。

【掲載誌】     刑事裁判資料215号130頁

 

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