債権者代位権により被保険者に対する損害賠償請求権を被保全債権とし建築家賠償責任保険契約に基づく保険金等の支払いを保険会社に求めたが、被保険者の免責許可決定が確定したことから債権者代位権の原因を欠き当事者適格を欠くに至ったとして不適法却下された事例
東京高等裁判所判決/平成19年(ネ)第1452号
平成20年4月30日
損害賠償、損害賠償等請求控訴事件
【判示事項】 債権者代位権により被保険者に対する損害賠償請求権を被保全債権とし建築家賠償責任保険契約に基づく保険金等の支払いを保険会社に求めたが、被保険者の免責許可決定が確定したことから債権者代位権の原因を欠き当事者適格を欠くに至ったとして不適法却下された事例
【判決要旨】 1 免責許可決定が確定したことにより、被保険者の控訴人に対する損害賠償債務はいわゆる自然債務となり、控訴人は被保険者に対し損害賠償の支払いを訴えをもって請求することができず、損害賠償の支払いを強制執行により実現することもできなくなったものである。
2 債権者代位権は、債権者が自己の債権を保全するために債務者の第3者に対する権利を行使するものであり、債権者の債務者に対する債権が存在していることを前提としてその債権を保全するために認められているものであるから、債権者の債務者に対する債権が、訴えをもって履行を請求することができず、強制執行により実現することもできない場合には、そのような債権を被保全権利として債権者代位権を行使することは許されないものと解するのが相当である。
3 免責許可決定が確定したことにより、被保険者の控訴人に対する損害賠償債務がいわゆる自然債務となった以上、被保険者の控訴人に対するいわゆる自然債務を「法律上の賠償責任」ということはできないから、被保険者の被控訴人に対する保険金請求権も消滅する。
【参照条文】 破産法254-1
民法423
保険法22
建築家特約条項1
【掲載誌】 金融・商事判例1304号38頁