自動車内で死亡した人の死体を同車両で運搬する行為について隠匿による死体遺棄罪が成立する場合
死体遺棄,恐喝未遂被告事件
【事件番号】 福岡高等裁判所判決/令和3年(う)第65号
【判決日付】 令和3年6月25日
【判示事項】 1 自動車内で死亡した人の死体を同車両で運搬する行為について隠匿による死体遺棄罪が成立する場合
2 自動車内で死亡した人の死体を積載したまま自動車を走行させて運搬した行為が死体遺棄罪に該当しないとされた事例
【判決要旨】 1 自動車内で死亡した人の死体を同車両で運搬する行為について隠匿による死体遺棄罪が成立するには,当該行為により,それ以前の状態に比較して単に死体発見が容易でなくなったというだけでは足りず,死体発見の困難さが,その程度においても,時間的にも,死者を悼み適時適切に埋葬することを妨げるに足りるものであることが必要である。
2 A及びBが,従前からCに対し継続的に暴行を加えていたところ,Aが自動車を運転し,Bを迎えに行く最中に,同乗していたCが後部座席に座った状態で死亡した後,A及びBは,Cの死体を自動車に積載したまま,被告人と死体の処理について電話で相談しながら,約1時間後に119番通報をするまで運搬したという事案において,A及びBが,Cの死亡の経緯について口裏合わせをする時間稼ぎをするとともに,その間,Cの死体発見を免れることも含めて,Cの死亡に係る事件性が発覚しないようにする意思であったが,死亡後短時間のうちに死亡の事実を公にしており,この間,死体の状況を変容させるような作為はなされず,本件行為による場所の移動及び時間の経過により,身元が不明になったり,死体が腐敗変質するなど宗教風俗上許されない事態も発生していないなどの判示の状況の下においては,A及びBがCの死体を運搬した行為は,死体遺棄罪にいう遺棄に当たらない。
【掲載誌】 高等裁判所刑事判例集73巻1号6頁
LLI/DB 判例秘書登載
刑法
(殺人)
第百九十九条 人を殺した者は、死刑又は無期若しくは五年以上の懲役に処する。
(死体損壊等)
第百九十条 死体、遺骨、遺髪又は棺に納めてある物を損壊し、遺棄し、又は領得した者は、三年以下の懲役に処する。