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2023年12月27日
刑事訴訟法の司法取引その12終 第12章 課徴金減免制度(リーニエンシー)との違い

第12章 課徴金減免制度(リーニエンシー)との違い

司法取引とよく似た制度に「独占禁止法上の課徴金減免制度(リーニエンシー)」というものがあります。

 

「独占禁止法上の課徴金減免制度」とは、違反行為に関する情報を積極的に得られるようにするため、自らの違反行為について公正取引委員会に報告した事業者に対し、課徴金を免除・減額する制度です。捜査に協力した者の刑を軽くすることで、大規模な組織犯罪の撲滅に有効であるとされています。

 

課徴金(課徴金制度)とは

 

独占禁止法違反に相当する行為を抑止するため、行政上の措置として、違反事業者に対して金銭的な不利益を課す制度。

 

 

 

課徴金減免制度

(リーニエンシー)

司法取引

対象

事業者

行為者・事業者

要件

自己の違反事実の申告

他人の犯罪の供述など

効果

■課徴金の減免

・第1順位:全額免除および刑事告発の免責

・第2〜5順位も所定割合で減額(※)

不起訴、軽い求刑

 

 

※課徴金の減免における順位とは?

 

公正取引委員会が調査を開始する前に、他の事業者よりも早期に報告することで、課徴金の減額率が大きくなる仕組みが取られています。調査開始日前と調査開始日後で合わせて最大5社に適用されます。

 

引用元:公正取引委員会|課徴金減免制度について

 

減免制度は行政事件、司法取引は刑事事件という違いはありますが、処分を軽減する代わりに違法行為の解明に協力を得るという点では共通した特徴があります。

 

大きな違いは、「課徴金減免制度」が事業者を対象とするのに対して、「司法取引制度」は行為者個人と両罰規定のある場合の事業者を対象としている点です。

 

独禁法の談合事件で、いち早く公取委に通報した者は免責されるという制度が導入されております。独禁法違反や金商法違反といった企業犯罪はそれだけ捜査・立証が困難で内部者の協力が重要だということです。今回の司法取引制度の導入はまさにこの点に主眼が置かれているように思われます。この制度は自己の犯罪事実ではなく、「他人の刑事事件」に関して捜査協力することがポイントで、企業犯罪にとって「他人」には他社の他に取締役等の役員や従業員等が含まれることになります。談合事件のように競合他社に抜け駆けされる危険だけでなく、役員の一部や従業員によって捜査機関にリークされるという事態が想定できます。これらの企業犯罪の嫌疑がかけられた場合、これまでは企業は一体として対応の検討を行ってきましたが、司法取引制度の導入により企業内部での対応も必要になってくると考えられます。企業としての対応も定まらないうちに一部の従業員によりリークされ捜査が入るという事態も想定して対応する必要が出てきます。一方で独禁法の通報制度が拡充されたと見て、会社として捜査に協力し免責を得るということもできます。本件改正を念頭に入れた上での今後のコンプライアンス体制構築が重要と言えるでしょう。

 

第13章 まとめ

企業犯罪や、経済犯罪に有効とされている「司法取引制度」。ただ、一歩運用方法を間違えば冤罪の温床にもなりますし、公平公正な犯罪捜査に支障をきたしかねません。

 

さらに、日本そのものが、警察における取調べの可視化が進まない環境の中で、司法取引制度が運用されるとなると、正確な裏づけ捜査ができるのか、多くの懸念が広がっています。検察の信用が失墜している現代において、司法取引制度を公平公正に運用できるのかが、鍵となりそうです。

 

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