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2024年01月08日
オービス(固定式速度違反自動取締装置)は計量法上の計量器に当たるが,被告人車両の速度測定は計量法10条1項に違反しているとは認められないと認定された事例

オービス(固定式速度違反自動取締装置)は計量法上の計量器に当たるが,被告人車両の速度測定は計量法10条1項に違反しているとは認められないと認定された事例

 

名古屋高等裁判所判決/平成18年(う)第654号

平成19年9月3日

道路交通法違反被告事件

【判示事項】    オービス(固定式速度違反自動取締装置)は計量法上の計量器に当たるが,被告人車両の速度測定は計量法10条1項に違反しているとは認められないと認定された事例

【判決要旨】    原判決が認定する罪となるべき事実は,被告人が,平成15年6月20日午後8時3分ころ,道路標識により,その最高速度を80キロメートル毎時と指定されている岐阜県中津川市内中央自動車道西宮線において,その最高速度を55キロメートル超える135キロメートル毎時の速度で,普通貨物自動車(軽四)を運転して進行した,というものである。

          関係証拠によれば,本件違反は,本件違反場所付近に設置されたT社製の固定式速度違反自動取締装置(以下「本件オービス」という。)により測定され,発覚したものである。被告人は,大幅な速度違反はしたが,135キロメートル毎時までは出ていないとして,同速度であったことを否定し,本件オービスによる速度測定の信用性を争い,また,大幅な速度違反をしたのは緊急避難によるなどと主張したが,原判決はこれを排斥し,上記の事実を認定した。

          所論は,要するに,原判決は,本件オービスを計量法上の計量器と認めず,その誤りの延長線上で,その保守点検などのあり方につき,法令の解釈・適用を誤っている,そして,計量器であれば,計量法10条1項の規制を受けるところ,本件オービスの運用実態,特に計測器としての正確性を保障するための保守点検・校正などに関し,許されない不確実性があるのに,原判決は,計量法の解釈・適用を誤り,ひいては誤測定の結果を正当として許容するなどの事実誤認を犯し,被告人運転車両の速度を誤認するに至っている,などというのである。

          そこで検討すると,原判決は,本件オービスが計量法上の計量器に当たらないというが,本件オービスは,特定計量器ではないが,速さを計るための計量器に当たるというべきであり,この点の原判決の説示には賛同できない。しかしながら,本件オービスによる速度測定は,捜査機関が速度違反の事実を証明しようとするものであるから,計量法10条1項の適用を受けるとしても,本件の速度測定はこれに違反しているとは認められない。すなわち,本件オービスについては,本件違反の前後について付言すれば,本件前の平成15年3月17日及び本件後の同年9月8日に,それぞれT社の担当者による点検が行われており,その結果はいずれも良好であり,このような年2回の点検が継続的に行われている。また,警察官が,本件オービスにフイルムを入れたり出したりする都度にも点検をしており,本件違反の同年6月20日午後8時3分の直前直後では,同日午後3時50分及び同月23日に警察官による点検が行われているが,いずれも異常なしとされている。

          このような点検状況に照らせば,本件オービスについては,計量法10条1項がいう「正確な計量をすべき努力」は払われており,違法な点はないというべきである。

          所論は,T社の担当者が,会社があらかじめ定めたマニュアルに従い,決められた手順で形式的に点検を行っているに過ぎないとの印象が強く,重大な機器の検査を担当する専門家としては物足りないなどと主張するが,仮に機器の細部にわたる点で分からない部分があったからといって,所定のマニュアルに従い異常の有無を点検することが非難されるいわれはなく,担当者は良好との点検結果を得ているのであるから,その結果が左右されるものではない。

          所論は,岐阜県警察とT社との契約では,精度点検は年2回と規定されているのに,T社のMは,原審公判で,営業部門の指示で年1回で良いと信じ,本件の検挙時点を含む期間,そのように実施していると供述しているが,それで良いとする格別納得できる立証はないなどという。

          しかしながら,T社による点検は,年2回行われている。所論は,この検査のうち,T社が作成した書類等の総合精度項目の点検が年1回しか行われていないことをもって,前記のとおり論難するのであるが,M証言によれば,これは,オービス誕生からの経過で,年1回のセンサーの計測の確認で精度の確認が十分できることによるというのであり,合理的根拠が認められるし,また,他の項目の点検は行われているのであるから,「正確な計量」の要請は果たされているというべきである。

          所論は,T社のM,E,本件オービスの点検をした警察官I,同Kの原審公判における各証言をみても,本件オービスの保守点検などに関し,作業従事者としての心構えが杜撰であることを浮き彫りにしており,これは計量法との関係でオービスを非計量器とみたことに由来するなどと種々主張するが,同証人らは,本件オービスが計量法上の計量器でないとして職務に従事しているわけではないし,職務に従い本件オービス等の異常の有無に注意を払いながら点検していると認められるから,所論の批判は当たらない。

          その他,所論が種々指摘する点を検討しても,本件オービスにより速度測定をすることが計量法に違反するものとはいえず,ひいては本件の関係証拠が違法であるなどとは認められない。結局,原判決の計量器の解釈についての前記誤りは判決に影響しない。

【参照条文】    計量法10-1

【掲載誌】     高等裁判所刑事裁判速報集平成19年425頁

 

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