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2024年01月10日
レックスホールディングス損害賠償請求事件

レックスホールディングス損害賠償請求事件

 

 

各損害賠償請求控訴事件

【事件番号】      東京高等裁判所判決/平成23年(ネ)第2230号

【判決日付】      平成25年4月17日

【判示事項】      1 MBOに当たって取締役は公正な企業価値の移転を図るべき善管注意義務を負うが,その義務違反があるとはいえないとされた事例

             2 MBOに際しての情報開示について取締役に善管注意義務違反があるとされた事例

【判決要旨】      1 MBOにあたって、取締役は、公正な企業価値の移転を図るべき善管注意義務を負うが、本件の事実関係のもとで、取締役に当該善管注意義務違反があったとはいえない。

             2 本件MBO当時、取締役にMBOの場合に特別な情報提供義務があったとはいえないが、本件事案の具体的な事情のもとでは、本件MBOが行われることが確定した賛同意見表明の段階での情報提供について、取締役に善管注意義務違反がある。

【参照条文】      会社法350

             会社法355

             会社法429-1

【掲載誌】        判例タイムズ1392号226頁

             金融・商事判例1420号20頁

             判例時報2190号96頁

             金融法務事情1983号116頁

 

 

会社法

(代表者の行為についての損害賠償責任)

第三百五十条 株式会社は、代表取締役その他の代表者がその職務を行うについて第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。

 

(忠実義務)

第三百五十五条 取締役は、法令及び定款並びに株主総会の決議を遵守し、株式会社のため忠実にその職務を行わなければならない。

 

(役員等の第三者に対する損害賠償責任)

第四百二十九条1項 役員等がその職務を行うについて悪意又は重大な過失があったときは、当該役員等は、これによって第三者に生じた損害を賠償する責任を負う。

 

 

 

       主   文

 

 1 本件控訴をいずれも棄却する。

 2 控訴費用は控訴人らの負担とする。

 

       事実及び理由

 

第1 控訴の趣旨

1 原判決を取り消す。

2 被控訴人らは、控訴人ら各自に対し、連帯して、別紙控訴人目録A~Dにそれぞれ対応する別紙請求目録A~Dの各控訴人欄の「合計額」欄記載の各金員及びこれに対する被控訴人株式会社レインズインターナショナルについては平成18年8月22日から、被控訴人Y2、同Y3、同Y4、同Y5、同Y6及び同Y7については平成21年12月15日から、各支払済みまで、各年5分の割合による金員を支払え。

3 仮執行宣言

第2 事案の概要(略語は、新たに定義するものを除き、原判決の例による。以下、本判決において同じ。)

1(1) 旧レックスは、平成18年当時、飲食店「牛角」、コンビニエンスストアampm、スーパーマーケット成城石井などを傘下に、フランチャイズシステムによる事業活動を展開する純粋持株会社であったが、その創業者で代表取締役であった被控訴人Y2は、同年11月から平成19年7月(後記③の任意売却許可)にかけて、有限責任事業組合APの支援と旧レックスの賛同の下、本件MBO(MBOとは、経営者による企業買収をいい、「Management Buyout」〔マネジメント・バイアウト〕の略語である。)を行った。本件MBOは、①APが運営する投資事業有限責任組合MBIファンド3号が100%出資して設立したAP8が、旧レックスの株式公開買付け(本件公開買付け)を行ってその支配株主となった後(本件公開買付手続)、②旧レックスの株主総会を開催し、定款変更によりその株式を全部取得条項付株式(会社法108条1項7号)とした上で、旧レックスが全部取得条項付株式1株につき普通株式0.00004547株の交付と引換えにこれを全部取得し(同法170条1項1号。本件全部取得手続。以下、上記定款変更前の旧レックスの株式を「旧株」、新たに交付された普通株式を「新株」という。)、③新株合計1株を任意売却し、その売却代金を株数に応じて分配する(同法234条1項2号、2、4項。本件任意売却手続)という方法で行われ、旧レックスは本件公開買付手続につき、本件賛同意見表明をした。本件公開買付手続(上記①)における旧株1株当たりの買付価格と、本件任意売却手続(上記③)における旧株主への旧株1株当たりの分配額は、いずれも23万円(本件公開買付価格)であったが、本件全部取得手続(上記②)において反対株主らが申し立てた会社法172条1項に基づく株式価格決定申立事件において、別件高裁決定は、旧株1株当たりの適正価格を33万6966円と決定し、同決定は確定した。

 (2) 控訴人ら88名は、いずれも旧レックスの株主であった者らであり、別紙控訴人目録A記載の44名の控訴人ら(株数合計565株。控訴人らA)は本件公開買付けに応じたことにより、別紙控訴人目録B記載の32名の控訴人ら(株数合計495株。控訴人らB)は市場で株式を売却したことにより、別紙控訴人目録C記載の11名の控訴人ら(株数合計83株。控訴人らC)は本件全部取得手続及び本件任意売却手続が行われたことにより、別紙控訴人目録D記載の控訴人X113(控訴人X113)は、440株を本件公開買付けに応じたこと、169株を本件全部取得手続及び本件任意売却手続が行われたことにより、それぞれ本件MBOと同時期に旧株を喪失した者である。被控訴人会社は、AP8が本件MBOの後、旧レックスを吸収合併し、平成19年9月1日に「株式会社レックス・ホールディングス」に、平成25年1月1日に「株式会社レインズインターナショナル」に、それぞれ商号変更をした会社であり、被控訴人Y3、被控訴人Y4及び被控訴人Y5は、いずれも旧レックスの取締役であった者であり、被控訴人Y6及び被控訴人Y7は、いずれも旧レックスの監査役であった者(以下、取締役であった上記3名の被控訴人を「被控訴人取締役ら」、監査役であった上記2名の被控訴人を「被控訴人監査役ら」とそれぞれいい、被控訴人取締役らと被控訴人監査役ら〈被控訴人会社及び被控訴人Y2以外の個人の被控訴人ら〉を「被控訴人役員ら」という。)である。

 (3) 本件は、控訴人らが、本件MBOは、被控訴人役員らがそれぞれ取締役又は監査役として旧レックスに対して負う善管注意義務に違反して行われたものであり、控訴人らは、本件MBOにより、1株当たりの適正価格が33万6966円であった旧株を、23万円という低廉な価格で手放すことを余儀なくされて、1株当たり10万6966円の損害を被ったなどと主張して、被控訴人会社に対しては会社法350条又は民法709条に基づき、被控訴人Y2に対しては会社法429条1項又は民法709条に基づき、被控訴人役員らに対しては会社法429条1項に基づき、控訴人ら各自に対し、連帯して、別紙控訴人目録A~Dにそれぞれ対応する別紙請求目録A~Dの各控訴人欄の「損害額(1株当たり106,966円)」欄記載の損害金及び「弁護士費用相当額」欄記載の弁護士費用相当損害を合計した「合計額」欄記載の金員及びこれに対する各被控訴人に対する各訴状送達の日の翌日から支払済みまで、民法所定の年5分の割合による遅延損害金を支払うよう求めた事案である。なお、控訴人らは、原審において6回に分けて訴えを提起した原告合計114名のうちの88名であり、原審では、それぞれ自己の訴状が被控訴人らに送達された日の翌日からの遅延損害金の支払を求めていたが、原審における最後の訴状(平成21年(ワ)第44340号事件の訴状)送達の日の翌日からの遅延損害金の支払を求める限度で控訴している。

2 原審は、控訴人らの請求をいずれも全て棄却した。

 当裁判所も、控訴人らの請求はいずれも全て棄却すべきものと判断した。

 

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