最高裁判所第3小法廷判決/昭和59年(オ)第557号
昭和63年10月18日
『昭和63年重要判例解説』商法・民事訴訟法事件
手形金取立金返還等請求事件
【判示事項】 1、信用金庫の商人性
2、信用金庫取引約定書4条4項の趣旨
3、破産債権者が支払停止又は破産申立前にされた取立委任に基づき支払停止又は破産申立のあったことを知ってした手形の取立と破産法104条2号但書
【判決要旨】 1、信用金庫法に基づいて設立された信用金庫は、商法上の商人にはあたらない。
2、信用金庫取引約定書4条4項は、取引先において信用金庫に対し、取引先がその債務を履行しない場合に、信用金庫の占有する取引先の手形等の取立又は処分をする権限及び取立又は処分によって取得した金員を取引先の債務の弁済に充当する権限を授与する趣旨であり、右手形等につき、取引先の債務不履行を停止条件として譲渡担保権、質権等の担保権を設定する趣旨の規定ではない。
3、破産債権者が、破産者が債務の履行をしなかったときには破産債権者の占有する破産者の手形の取立又は処分をしてその取得金を債務の弁済に充当することができる旨の条項を含む取引約定を締結した上、支払の停止又は破産の申立のあったことを知る前に破産者から手形の取立を委任されて裏書交付を受け、支払の停止等の事実を知った後破産宣告前に右手形を取り立てたことにより負担した破産者に対する取立金引渡債務は、破産法104条2号但書にいう「支払ノ停止若ハ破産ノ申立アリタルコトヲ知リタル時ヨリ前ニ生ジタル原因ニ基」づき負担したものに当たる。
【参照条文】 商法4-1
信用金庫法1
信用金庫法2
信用金庫法(昭和56年法律第60号による改正前のもの)53
民法1編4章1節
破産法104
【掲載誌】 最高裁判所民事判例集42巻8号575頁