井上金属工業事件・株主総会の議長が、投票による表決を選択した場合に、投票を行わなかった株主の議決権を賛成に算入する等して当該議案が可決承認された旨宣言したことについて、決議の方法が法令に違反したものであるとして株主総会決議取消請求が認容された事例
株主総会決議取消請求事件
【事件番号】 大阪地方裁判所判決/平成15年(ワ)第10050号
【判決日付】 平成16年2月4日
【判示事項】 株主総会の議長が、投票による表決を選択した場合に、投票を行わなかった株主の議決権を賛成に算入する等して当該議案が可決承認された旨宣言したことについて、決議の方法が法令に違反したものであるとして株主総会決議取消請求が認容された事例
【判決要旨】 議長が投票という表決方法を選択した以上、投票によって意思を表明しない者の議決権を、その者の内心を推測して当該議案に賛成する旨投票したとして扱うことは許されないところ、投票を行わなかった株主の議決権を当該議案に賛成する旨投票しなかったとして扱うと、当該議案は否決されたにもかかわらず、議長は、当該議案が可決承認された旨宣言したから、当該決議はその方法が法令に違反したものである。
【参照条文】 商法247-1
【掲載誌】 金融・商事判例1191号38頁
会社法
(株主総会等の決議の取消しの訴え)
第八百三十一条 次の各号に掲げる場合には、株主等(当該各号の株主総会等が創立総会又は種類創立総会である場合にあっては、株主等、設立時株主、設立時取締役又は設立時監査役)は、株主総会等の決議の日から三箇月以内に、訴えをもって当該決議の取消しを請求することができる。当該決議の取消しにより株主(当該決議が創立総会の決議である場合にあっては、設立時株主)又は取締役(監査等委員会設置会社にあっては、監査等委員である取締役又はそれ以外の取締役。以下この項において同じ。)、監査役若しくは清算人(当該決議が株主総会又は種類株主総会の決議である場合にあっては第三百四十六条第一項(第四百七十九条第四項において準用する場合を含む。)の規定により取締役、監査役又は清算人としての権利義務を有する者を含み、当該決議が創立総会又は種類創立総会の決議である場合にあっては設立時取締役(設立しようとする株式会社が監査等委員会設置会社である場合にあっては、設立時監査等委員である設立時取締役又はそれ以外の設立時取締役)又は設立時監査役を含む。)となる者も、同様とする。
一 株主総会等の招集の手続又は決議の方法が法令若しくは定款に違反し、又は著しく不公正なとき。
二 株主総会等の決議の内容が定款に違反するとき。
三 株主総会等の決議について特別の利害関係を有する者が議決権を行使したことによって、著しく不当な決議がされたとき。
2 前項の訴えの提起があった場合において、株主総会等の招集の手続又は決議の方法が法令又は定款に違反するときであっても、裁判所は、その違反する事実が重大でなく、かつ、決議に影響を及ぼさないものであると認めるときは、同項の規定による請求を棄却することができる。