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2024年01月15日
令和3年5月公布・商標法・意匠法改正その2 第2章 商標法・意匠法とは

第2章 商標法・意匠法とは

そもそも、商標法や意匠法とはどのような法律なのでしょうか。まずは両者の共通点、相違点を確認しておきましょう。

 

商標法

私たちがCMや店頭で見かける商品やサービス(以下、商品)には、名前が付けられています。商品を選択する際、「○○社の✕✕なら有名だし良さそう」と判断することもあるでしょう。しかし、○○社と縁もゆかりもない会社が勝手に「✕✕」という商品名で同じような商品を販売すると、○○社の売上はもちろんのこと、消費者との信頼関係にも響きかねません。

 

そこで、商品などに付けられる表示(=商標)を勝手に他人が使用できないよう規制し、「商標の使用をする者の業務上の信用の維持を図り」「需要者の利益を保護する」ために作られたのが商標法です。商標として法の保護を受けるためには、その表示が商標としての要件を満たした上で、特許庁で登録を受ける必要があります。

 

商標とされる要件はいくつかありますが、例えば普通名称(同業者が一般的に使用している名称)は登録できません。住宅販売会社が自社の商品に「ハウス」と名付けても、住宅の名前としてはあまりにも一般的過ぎるため、商標とは認められないのです。

 

一方で住宅とは無関係の商品を指定すれば、商標登録が認められる場合があります。加工食品を指定商品とした「ハウス食品」は、その実例です。

 

商標は表示は名称だけではありません。図形や立体的形状(人形など)、最近では「動き」や「音」の他、「色彩」なども商標登録が可能になっています。

 

意匠法

「意匠」とはいわゆるデザインのうち、特に市場に向けて量産される工業製品のデザインを指します。同じ機能でもより洗練されたデザインにすることで消費者の購買意欲を高める効果が期待できるため、勝手に他者がデザインを真似できないよう意匠法によって保護する必要があるのです。

 

意匠は商標と同様に、意匠と認められる一定の要件を満たし、登録を受けて初めて「権利」となります。要件としては、視覚的に何らかの美感を生じさせることや、容易には創作できないものであることなど、デザインならではのものが挙げられます。

 

自社オリジナルのキャラクター人形など、登録しようとする対象が商標と意匠のどちらにあたるのかの線引きが難しい場合があります。法の目的には「産業の発達に寄与する」とありますが、意匠法では「さらに意匠の創作を奨励」する目的があること、また要件として新規性が求められていること(意匠法3条1項)など商標法と異なる点がいくつかあります。

 

対象物の何を保護するかによって登録先を決める方法もありますが、両方に登録するという選択肢もあります。いずれにせよ登録の際は専門家(弁理士)のアドバイスを受けることをおすすめします。

 

従来の商標法・意匠法の課題

商標法、意匠法ともに登録されれば登録対象の専有権を得られます。商標であれば、他者が登録商標によって指定される商品を模倣、あるいは類似した商標を使用した場合にその使用・販売の差止や損害賠償の請求ができるようになるのです。

 

これらの請求権は、模倣品を海外から輸入する行為に対しても行使できます(商標法・意匠法各第2条参照)。ただし、改正前の規定ではその行使に一定の制限がありました。

占有権の侵害は侵害者が業として、すなわち事業として模倣品や類似品を販売・輸入したことが要件となっており、「個人が海外の事業者から自分が使用する目的で模倣品を輸入する」行為は「業として」ではないとされていたのです。

 

しかしインターネットによって海外との取引が拡大し、個人でも容易に輸入が行えるようになると、海外事業者が輸入業者を通さず模倣品を「個人使用目的」とし、小口の個人輸出を大量に行うケースが増えました。実質的に事業といえるにもかかわらず「個人輸入」を隠れ蓑にし、税関をすり抜ける手口が横行するようになったのです。

 

今回の商標法・意匠法の改正は、このような事情が背景にあります。

 

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