請負契約の注文者が瑕疵の修補に代わる損害賠償債権をもって報酬全額の支払いとの同時履行を主張することの可否
工事代金請求事件
【事件番号】 最高裁判所第3小法廷判決/平成5年(オ)第1924号
【判決日付】 平成9年2月14日
【判示事項】 請負契約の注文者が瑕疵の修補に代わる損害賠償債権をもって報酬全額の支払いとの同時履行を主張することの可否
【判決要旨】 請負契約の目的物に瑕疵がある場合には、注文者は、瑕疵の程度や各契約当事者の交渉態度等にかんがみ信義則に反すると認められるときを除き、請負人から瑕疵の補修に代わる損害の賠償を受けるまでは、報酬全額の支払いを拒むことができ、これについて履行遅滞の責任も負わない。
【参照条文】 民法634
民法533
民法412
民法1-2
【掲載誌】 最高裁判所民事判例集51巻2号337頁
民法
(履行期と履行遅滞)
第四百十二条 債務の履行について確定期限があるときは、債務者は、その期限の到来した時から遅滞の責任を負う。
2 債務の履行について不確定期限があるときは、債務者は、その期限の到来した後に履行の請求を受けた時又はその期限の到来したことを知った時のいずれか早い時から遅滞の責任を負う。
3 債務の履行について期限を定めなかったときは、債務者は、履行の請求を受けた時から遅滞の責任を負う。
(同時履行の抗弁)
第五百三十三条 双務契約の当事者の一方は、相手方がその債務の履行(債務の履行に代わる損害賠償の債務の履行を含む。)を提供するまでは、自己の債務の履行を拒むことができる。ただし、相手方の債務が弁済期にないときは、この限りでない。
(注文者が受ける利益の割合に応じた報酬)
第六百三十四条 次に掲げる場合において、請負人が既にした仕事の結果のうち可分な部分の給付によって注文者が利益を受けるときは、その部分を仕事の完成とみなす。この場合において、請負人は、注文者が受ける利益の割合に応じて報酬を請求することができる。
一 注文者の責めに帰することができない事由によって仕事を完成することができなくなったとき。
二 請負が仕事の完成前に解除されたとき。