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2024年01月26日
平成30年民法(相続法)改正その6 第7 自筆証書遺言の方式の緩和

第7 自筆証書遺言の方式の緩和

1,遺言の活用

遺言とは,自分が死亡したときに財産をどのように分配するか等について,自己の最終意思を明らかにするものです。遺言がある場合には,原則として,遺言者の意思に従った遺産の分配がされます。

また,遺言がないと相続人に対して財産が承継されることになりますが,遺言の中で,日頃からお世話になった方に一定の財産を与える旨を書いておけば(遺贈といいます),相続人以外の方に対しても財産を取得させることができます。

このように,遺言は,被相続人の最終意思を実現するものですが,これにより相続をめぐる紛争を事前に防止することができるというメリットもあります。また,家族の在り方が多様化する中で,遺言が果たす役割はますます重要になってきています。

我が国においては,遺言の作成率が諸外国に比べて低いといわれていますが,今回の改正により,自筆証書遺言の方式を緩和し,また,法務局における保管制度を設けるなどしており,自筆証書遺言を使いやすくしています。

遺言には,下記図のとおり公正証書遺言もありますが,作成される方のニーズに応じて使い分けていただければと思います。

 

遺言の方式には,主に自筆証書遺言と公正証書遺言があります。

○ 自筆証書遺言

自筆証書遺言は,軽易な方式の遺言であり,自書能力さえ備わっていれば他人の力を借りることなく,いつでも自らの意思に従って作成することができ,手軽かつ自由度の高い制度です。今回の立法により,財産目録については自書しなくてもよくなり,また,法務局における保管制度も創設され,自筆証書遺言が更に利用しやすくなります。

○ 公正証書遺言

公正証書遺言は,法律専門家である公証人の関与の下で,2人以上の証人が立ち会うなど厳格な方式に従って作成され,公証人がその原本を厳重に保管するという信頼性の高い制度です。また,遺言者は,遺言の内容について公証人の助言を受けながら,最善の遺言を作成することができます。また,遺言能力の確認なども行われます。

 

遺言書

① 遺留分減殺請求権の行使により共有関係が当然に生ずることを回避することができる。

② 遺贈や贈与の目的財産を受遺者等に与えたいという遺言者の意思を尊重することができる。

事例

 

2,従来の自筆証書遺言の作成方法

自筆証書遺言は、自分でいつでも作成できるため最も作成しやすい遺言と言えますが、従来の相続法では「全文の自署」が要件とされていました。

 

しかし、遺言作成する人が高齢の場合や病床に臥している場合は、たくさん文字を書く行為に大変な労力がかかるため、この要件が自筆証書遺言作成の大きなハードルとなっていました。

 

また、字がうまく書けておらず文字が判別ができないなど、遺言書の効力についてトラブルの原因となることも少なくありませんでした。

 

このような問題を改善するため、改正法では作成方式を緩和し、一部自署する必要がなくなりました。

 

3,自筆証書遺言の方式の緩和(一部自署によらなくてもOKに)

改正相続法では「全文の自署」の要件が緩和され、「相続財産の全部または一部の目録」を添付する場合には、その目録については自署によらなくてよいことを認めました。

 

改正相続法での方式をまとめると以下のとおりです。

 

遺言書本文⇒自署が必要

財産目録⇒自署しなくてOK

財産目録(遺産の明細)について、具体的に以下の方法が認められることになりました。

①パソコンで遺産の明細書を作成

②不動産の登記事項証明書を添付

③預貯金の通帳口座のコピーを添付

ただし、これらの財産目録の各頁には、遺言者が署名押印をする必要があります。

 

このような方式の緩和により、自書しなければならない部分が減り、文字をたくさん書く労力が軽減しました。

 

4,施行日

自筆証書遺言の方式緩和は、2019年1月13日より施行されています。

パソコンで作成した財産目録、不動産の登記事項証明書や預貯金通帳のコピーなどを代用して作成した財産目録を活用するなど方式緩和された遺言の作成は、2019年1月13日以降に作成された遺言のみが対象となり、1月13日以前に作成された遺言は対象となりません。これも本人の意思尊重規定だからですね。

 

 

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