食品衛生法第21条による食肉販売の営業許可を受けない者のなした食肉買入契約の効力
売掛代金請求事件
【事件番号】 最高裁判所第2小法廷判決/昭和33年(オ)第61号
【判決日付】 昭和35年3月18日
【判示事項】 食品衛生法第21条による食肉販売の営業許可を受けない者のなした食肉買入契約の効力
【判決要旨】 食品衛生法第21条による食肉販売の営業許可を受けない者のなした食肉の買入契約は無効ではない。
【掲載誌】 最高裁判所民事判例集14巻4号483頁
食品衛生法
第五章 食品添加物公定書
第二十一条 厚生労働大臣及び内閣総理大臣は、食品添加物公定書を作成し、第十三条第一項の規定により基準又は規格が定められた添加物及び食品表示法第四条第一項の規定により基準が定められた添加物につき当該基準及び規格を収載するものとする。
食品衛生法施行令
(法第二十六条第一項の検査)
第五条 法第二十六条第一項の規定による命令は、都道府県知事が同項に規定する者に食品衛生上の危害の発生を防止するため必要な措置を講ずべき旨の通知をした後において、二月を超えない範囲内で都道府県知事が定める期間内にその者が製造し、又は加工する食品、添加物、器具又は容器包装について、検査の項目、試験品の採取方法、検査の方法その他厚生労働省令で定める事項を記載した検査命令書により行うものとする。
2 法第二十六条第一項の規定により検査を受けようとする者は、厚生労働省令で定めるところにより、都道府県知事又は登録検査機関に申請書を提出しなければならない。
3 都道府県知事又は登録検査機関は、前項の申請書を受理したときは、検査命令書に記載されたところに従い、試験品を採取し、検査を行うものとする。
民法
(公序良俗)
第九十条 公の秩序又は善良の風俗に反する法律行為は、無効とする。
主 文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理 由
上告代理人高橋義一郎、同伊沢英造の上告理由第一点について。
原判決が所論の訴外会社が本件当時食品衛生法による許可を受けて食肉販売業を営んでいたこと及び自衛隊に対し精肉の納入をしたのは同訴外会社であることを認定判示していることは所論のとおりである。しかし右事実があるからといつて、必ずしも本件売買の買主が右訴外会社であると認定しなければならないものというを得ないから、原判決には所論の違法は存しない。所論はひつきよう原審の専権に属する事実認定を非難するに帰着し、上告適法の理由となすを得ない。
同第二点について。
本件売買契約が食品衛生法による取締の対象に含まれるかどうかはともかくとして同法は単なる取締法規にすぎないものと解するのが相当であるから、上告人が食肉販売業の許可を受けていないとしても、右法律により本件取引の効力が否定される理由はない。それ故右許可の有無は本件取引の私法上の効力に消長を及ぼすものではないとした原審の判断は結局正当であり、所論は採るを得ない。
よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
最高裁判所第二小法廷