白鳥事件・伝聞供述にあたるかどうかを定める基準
爆発物取締罰則違反等被告事件
【事件番号】 最高裁判所第1小法廷判決/昭和35年(あ)第1378号
【判決日付】 昭和38年10月17日
【判示事項】 1、認定した事実と証拠力
2、伝聞供述にあたるかどうかを定める基準
3、原供述者が二者択一的である伝聞供述と証拠能力
【判決要旨】 1、証拠によって認定した事実は、他の事実の証拠となり得る。
2、伝聞供述となるかどうかは、要証事実と当該供述者の知覚との関係により決せられるものと解すべきであって、甲が一定内容の発言をしたこと自体を要証事実とする場合には、その発言を直接知覚した乙の供述は伝聞供述にあたらないが、甲の発言内容に符号する事実を要証事実とする場合には、その発言を直接知覚したのみで、要証事実自体を直接知覚していない乙の供述は伝聞供述にあたる。
3、刑訴第324条第2項と第321条第1項第3号所定の要件を具備した伝聞供述の原供述者が特定の甲又は乙のいずれであるか不明確であっても、それだけの理由でその伝聞供述が証拠能力を有しないものとはいえない。
【参照条文】 刑事訴訟法317
刑事訴訟法324-2
刑事訴訟法320-1
刑事訴訟法321-1
刑事訴訟法3号
【掲載誌】 最高裁判所刑事判例集17巻10号1795頁
刑事訴訟法
第三百十七条 事実の認定は、証拠による。
第三百二十条 第三百二十一条乃至第三百二十八条に規定する場合を除いては、公判期日における供述に代えて書面を証拠とし、又は公判期日外における他の者の供述を内容とする供述を証拠とすることはできない。
② 第二百九十一条の二の決定があつた事件の証拠については、前項の規定は、これを適用しない。但し、検察官、被告人又は弁護人が証拠とすることに異議を述べたものについては、この限りでない。
第三百二十一条 被告人以外の者が作成した供述書又はその者の供述を録取した書面で供述者の署名若しくは押印のあるものは、次に掲げる場合に限り、これを証拠とすることができる。
一 裁判官の面前(第百五十七条の六第一項及び第二項に規定する方法による場合を含む。)における供述を録取した書面については、その供述者が死亡、精神若しくは身体の故障、所在不明若しくは国外にいるため公判準備若しくは公判期日において供述することができないとき、又は供述者が公判準備若しくは公判期日において前の供述と異なつた供述をしたとき。
二 検察官の面前における供述を録取した書面については、その供述者が死亡、精神若しくは身体の故障、所在不明若しくは国外にいるため公判準備若しくは公判期日において供述することができないとき、又は公判準備若しくは公判期日において前の供述と相反するか若しくは実質的に異なつた供述をしたとき。ただし、公判準備又は公判期日における供述よりも前の供述を信用すべき特別の情況の存するときに限る。
三 前二号に掲げる書面以外の書面については、供述者が死亡、精神若しくは身体の故障、所在不明又は国外にいるため公判準備又は公判期日において供述することができず、かつ、その供述が犯罪事実の存否の証明に欠くことができないものであるとき。ただし、その供述が特に信用すべき情況の下にされたものであるときに限る。
② 被告人以外の者の公判準備若しくは公判期日における供述を録取した書面又は裁判所若しくは裁判官の検証の結果を記載した書面は、前項の規定にかかわらず、これを証拠とすることができる。
③ 検察官、検察事務官又は司法警察職員の検証の結果を記載した書面は、その供述者が公判期日において証人として尋問を受け、その真正に作成されたものであることを供述したときは、第一項の規定にかかわらず、これを証拠とすることができる。
④ 鑑定の経過及び結果を記載した書面で鑑定人の作成したものについても、前項と同様である。
第三百二十四条 被告人以外の者の公判準備又は公判期日における供述で被告人の供述をその内容とするものについては、第三百二十二条の規定を準用する。
② 被告人以外の者の公判準備又は公判期日における供述で被告人以外の者の供述をその内容とするものについては、第三百二十一条第一項第三号の規定を準用する。