第8章 特許料等の料金体系見直し(引き上げ)
特許料等の料金体系見直しは、特許特別会計の収支悪化への対応と考えられます。審査負担の増大や手続きのデジタル化等による利用者の利便性向上のために、料金体系の見直しがされました。
本改正の影響を受ける企業
それでは、今回の改正の影響を受けるのはどのような企業でしょうか。次項で見ていきましょう。
知的財産権関連の出願を行う全企業
新型コロナウイルスの対応策については、知的財産権関連の出願を行う多くの企業が影響を受け得ることになります。審判手続きのオンライン化は、審判に関わる多くの企業に影響を及ぼします。
特許料納付期間経過後の割増特許料免除規定も、多くの出願企業に影響します。もちろん、パンデミックによって全ての企業が所定期間内に特許料を納付できなくなったわけではありませんが、企業活動の制約や緊急事態宣言、まん延防止等重点措置などによって納付作業が遅延する可能性はどの企業にもあります。特許料等の金額見直しもまた、多くの企業に影響します。以下の表のとおり、全体的に値上げとなる予定です。
改定前 改定後
第1年から第3年 毎年2,100円+請求項の数×200円 毎年4,300円+請求項の数×300円
第4年から第6年 毎年6,400円+請求項の数×500円 毎年1万300円+請求項の数×800円
第7年から第9年 毎年1万9,300円+請求項の数×1,500円 毎年2万4,800円+請求項の数×1,900円
第10年から第25年 毎年5万5,400円+請求項の数×4,300円 毎年5万9,400円+請求項の数×4,600円
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参考:令和3年特許法等改正に伴う料金改定のお知らせ | 特許庁
海外からの模倣品被害を受ける企業
厳密には特許法ではありませんが、意匠法・商標法の改正によって海外からの模倣品持ち込みが権利の侵害として位置づけられたことにより、海外からの模倣品被害に苦しむ企業が差止めや損害賠償請求などの対策がとりやすくなります。また、税関における水際差止めが増えることも予想されます。
もともと事業者による輸入は違法でしたが、これを「個人の私的利用のために持ち込んだ」と見せかけることによる事実上の模倣品輸入が絶えませんでした。ECサイト経由の個人輸入が増加していることを踏まえると、現行法では権利保護に大きな課題があったのです。しかし、今回の法改正によって、このような模倣品被害を解決することが期待されます。
特許ライセンス契約に関わる企業
訂正手続きにおける通常実施権者の承諾要件撤廃は、特許ライセンス契約を締結する企業、特に特許権を有する企業に大きな影響を及ぼします。
特許権を取得した後も、競合企業や取引先企業などから「無効である」との主張を受け、対応を迫られることがあります。特許権の範囲を変更して対応するとしても、従来はそのライセンス契約を締結する相手方に訂正の承諾を得る必要がありましたが、承諾撤廃という形で訂正手続きが簡素化されたことで、特許権の範囲縮小などの対応が行いやすくなりました。
改正による業務への影響は?
特許法の改正により、知的財産権関連の審判手続きがオンライン化されます。出願の手間・時間が軽減されるため、ほかの業務に時間を充てられるようになるでしょう。
また、模倣品の販売や輸入がより厳しく規制されることで、正規品に対するニーズが増え、販売数が増加することも期待できます。店舗やスタッフの増加が必要になるかもしれません。
しかし、その一方で、特許権を有する商品・サービスの優位性が減る可能性があります。特許権を取得してPRするだけでは継続する競争力を獲得できなくなり、新しい商品・サービスの開発サイクルを早める必要性が生じるかもしれません。