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2024年02月26日
産業競争力強化法の令和3年改正その1 第1章 産業競争力強化法とは

第1章 産業競争力強化法とは

1.産業競争力強化法制定の背景

かつては国内総生産第2位の地位を築いていた日本。平成22年に中国にその座を明け渡して以降、第3位の地位となっています。

産業競争力強化法が制定された背景には、1991年のバブル崩壊以降の長期的な経済停滞がありました。バブル時代の過剰な投資に対する反省から産業界は投資に消極的になり、それが「失われた20年」と呼ばれる低成長時代をもたらす原因となりました。

そこで、産業を活性化させるために構想されたのが、第二次安倍内閣(2012~2014年)におけるアベノミクスです。

アベノミクスとは、「大胆な金融政策」「機動的な財政政策」「投資を喚起する成長戦略」という「三本の矢」で日本経済の再興を図ろうという経済政策です。その中の第三の矢にあたる「投資を喚起する成長戦略」を実行するために策定されたのが産業競争力強化法です。

 

政府は日本の産業競争力を高めるため平成25年に産業競争力強化法を制定し、以降この法律は2度の改正を行っています。

 

 

アベノミクスの一環として2013年(平成25年)に制定された産業競争力強化法は2018年(平成30年)の改正を経て、2021年(令和3年)に「産業競争力強化法等の一部を改正する等の法律」(令和3年6月16日法律第70号)によって再び改正され、2021年6月、8月に改正法が施行されました。

 

産業競争力強化法は、安倍総理の政策である「成長戦略」の推進をするために2013年(平成25年)に成立、2014年(平成26年)に施行された法律で、企業の創業期から成長期、成熟期、そして停滞期まで、あらゆる事業の発展段階に合わせた支援策が用意されています。

 

産業競争力強化法が制定された平成25年(2013年)は国内総生産(GDP)において、世界第2位の座を中国に奪われるなど、世界経済における日本のプレゼンスが低下していることが問題となっており、要因は「過小投資」、「過剰規制」、「過当競争」の3つの「過」にあるとされていました。

 

この問題を解決し、日本の経済成長を回復する目的で産業競争力強化法が制定されました。

 

2 産業競争力強化法で解決を目指す日本経済の3つの「過」の問題

日本経済発展を阻害する3つの「過」の当時の状況と、その課題を解決すべく制定された産業競争力強化法の解決策について、以下に詳しく解説します。

 

①過少投資

1990年代後半以降のバブル崩壊以降デフレが深刻化し、期待成長率が伸びなくなったため企業は設備投資を控えざるを得ない状況になりました。加えて2008年9月のリーマンショックによる世界的な金融危機、2011年3月に発生した東日本大震災及び福島第一原子力発電所の事故等の影響を受けて民間設備投資の水準は大幅に落ち込みました。

一方で、多額の内部留保を蓄積している企業が多いことから産業競争力が強化されて設備投資が活発になれば日本経済の再興が期待できるといえます。

これを受け、産業競争力強化法で「ベンチャー企業の成長支援」「先端設備投資の促進 」などを制定、税制措置を講じ、民間に留まる資金(巨額の内部留保)を動かすことによる投資の活性化を目指しました。

 

②過剰規制

戦後の日本が築き上げた規制依存型経済システムは高度成長期には機能していました。しかし、生産規制、販売規制、環境規制、免許制、参入規制等の過剰規制は、東西冷戦構造の崩壊を契機とした90年代以降の世界市場の構造変化への対応力を極度に低下させました。

 

安倍総理は過剰な規制こそ、日本の成長を疎外している要因であるとし、「規制改革実施計画」を立てて、様々な分野での規制撤廃に尽力しました。

 

産業競争力強化法においても、企業実証特例制度(新規事業チャレンジする事業者に対して、規制の特例措置を事業者単位で認める制度)やグレーゾーン解消制度(現行の規制の適用範囲が不明確な分野において、 具体的な事業計画に即して、あらかじめ規制の適用の有無を確認することができる制度)を制定し、積極的な規制改革の推進を可能にする環境を整備しました。

 

③過当競争

グローバル競争が激しくなる中、欧米やアジア諸国ではM&A等の事業再編が活発化しているため、寡占化と企業規模の巨大化が進んでいます。

これに対して日本では、国内企業同士での過当競争が続き、日本企業の収益性を低下させる原因となっています。

 

平成25年に閣議決定された「日本再興戦略」でも、「国内の過当競争を解消し、思い切った投資によりイノベー ションを起こし、収益力を飛躍的に高めることなどを通じて、例えば技術でもビジネスでも世界で勝ち抜く製造業の復活を目指す。このため、事業再編や事業組替を促進し、経営資源や労働移動の円滑化を支援する。」と明記されています。

 

産業競争力強化法においては、事業再編等に取り組む事業者に対し、税制優遇措置や会社法の特例措置等が講じられました。

 

 

出典:産業競争力強化法の概要と国会論議の整理 ~期待される産業競争力強化法の効果的な運用~

 

 

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