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2024年02月27日
重婚における後婚の離婚による解消と後婚の取消の訴の許否

重婚における後婚の離婚による解消と後婚の取消の訴の許否

 

 

婚姻取消請求事件

【事件番号】      最高裁判所第3小法廷判決/昭和54年(オ)第226号

【判決日付】      昭和57年9月28日

【判示事項】      重婚における後婚の離婚による解消と後婚の取消の訴の許否

【判決要旨】      重婚において後婚が離婚によつて解消された場合には、特段の事情のない限り、後婚の取消を請求することは許されない。

【参照条文】      民法732

             民法744

             民法749

【掲載誌】        最高裁判所民事判例集36巻8号1642頁

 

 

事案の概要

 本件は、夫が妻を欺罔して協議離婚届に署名押印させ、これによる離婚届を済ませた後、別の女性と婚姻してその間に1子をもうけたという事実関係のもとにおいて、前婚の妻が前婚の協議離婚無効確認の確定判決を得たうえ、夫の後婚が重婚にあたるとして後婚の取消を求める訴を提起したところ、右訴訟係属中に後婚が離婚によつて解消されるに至つたという事案である。

原審は、婚姻取消の効果は将来に向つて生ずるにとどまるから、もはや後婚の取消を請求する利益はないとして本件訴を却下したのに対し、前婚の妻が上告して、婚姻の取消と離婚とは社会的意味が異るほか、財産関係においても取扱に大きな違いがあるとして原判決の法令違背を主張した。

本判決は、後記判決文のとおりの説示をもつて原審の判断を支持したものである。

 

 

民法

(重婚の禁止)

第七百三十二条 配偶者のある者は、重ねて婚姻をすることができない。

 

(不適法な婚姻の取消し)

第七百四十四条 第七百三十一条から第七百三十六条までの規定に違反した婚姻は、各当事者、その親族又は検察官から、その取消しを家庭裁判所に請求することができる。ただし、検察官は、当事者の一方が死亡した後は、これを請求することができない。

2 第七百三十二条又は第七百三十三条の規定に違反した婚姻については、当事者の配偶者又は前配偶者も、その取消しを請求することができる。

 

(婚姻の取消しの効力)

第七百四十八条 婚姻の取消しは、将来に向かってのみその効力を生ずる。

2 婚姻の時においてその取消しの原因があることを知らなかった当事者が、婚姻によって財産を得たときは、現に利益を受けている限度において、その返還をしなければならない。

3 婚姻の時においてその取消しの原因があることを知っていた当事者は、婚姻によって得た利益の全部を返還しなければならない。この場合において、相手方が善意であったときは、これに対して損害を賠償する責任を負う。

 

(離婚の規定の準用)

第七百四十九条 第七百二十八条第一項、第七百六十六条から第七百六十九条まで、第七百九十条第一項ただし書並びに第八百十九条第二項、第三項、第五項及び第六項の規定は、婚姻の取消しについて準用する。

 

 

 

       主   文

 

 本件上告を棄却する。

 上告費用は上告人の負担とする。

 

       理   由

 

 上告代理人阪本政敬、同川崎裕子、同北尻得五郎、同松本晶行、同池上健治、同布谷武治郎の上告理由について

 重婚の場合において、後婚が離婚によつて解消されたときは、特段の事情のない限り、後婚が重婚にあたることを理由としてその取消を請求することは許されないものと解するのが相当である。けだし、婚姻取消の効果は離婚の効果に準ずるのであるから(民法七四八条、七四九条)、離婚後、なお婚姻の取消を請求することは「特段の事情がある場合のほか、法律上その利益がないものというべきだからである。

 これを本件についてみるのに、原審の適法に確定したところによれば、上告人と被上告人A間の前婚についての協議離婚が無効とされた結果、右協議離婚届出後にされた被上告人Aと同B間の後婚が被上告人Aにつき前婚との関係で重婚となるに至つたものの、前婚の配偶者である上告人が右重婚を理由に提起した後婚の取消を求める本訴の係属中に右後婚が離婚によつて解消されたというのであるから、他に特段の事情について主張立証のない本件においては、重婚を理由として後婚の取消を求めることはもはや許されないものといわなければならない。これと同旨の原審の判断は結論において正当として是認することができる。論旨は、採用することができない。

 よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

    最高裁判所第三小法廷

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