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2024年03月01日
山王川(茨城県)工場廃水事件

山王川(茨城県)工場廃水事件

 

 

損害賠償請求事件

【事件番号】      最高裁判所第3小法廷判決/昭和39年(オ)第902号

【判決日付】      昭和43年4月23日

【判示事項】      共同行為者の流水汚染により惹起された損害と各行為者の賠償すべき損害の範囲

【判決要旨】      共同行為者各自の行為が客観的に関連し共同して流水を汚染し違法に損害を加えた場合において、各自の行為がそれぞれ独立に不法行為の要件を備えるときは、各自が、右違法な加害行為と相当因果関係にある全損害について、その賠償の責に任ずべきである。

【参照条文】      民法709

             民法719

             国家賠償法2-1

【掲載誌】        最高裁判所民事判例集22巻4号964頁

 

 

 

事案の概要

 原告121名は、山王川(茨城県)の流域でその流水を使用して水稲耕作を営む者であるが、その上流にある国営のアルコール工場から排出されるアルコール蒸溜廃液(窒素を含有)により、稲作に甚大な損害を蒙つたと主張し、国家賠償法2条、民法709条に基づき、被告国に対し、右損害の賠償を請求した。

これが本件訴訟であり、種々の重要な法律問題を含む事案であるが、本判決要旨は、複数の企業(工場)からの廃液放出による流水汚染により損害が発生した場合に、各企業の賠償すべき損害の範囲如何に関する(本件では、山王川の流域には国営のアルコール工場だけでなく複数の工場が存在して廃液を山王川に排出し、また、都市下水も右川に流入して、山王川の流水を汚染している。)

 共同不法行為について示された従来の判例学説によれば、企業間の共謀ないし相互の事情の知不知にかかわりなく、また各企業の流水汚染に寄与する程度の大小にかかわりなく、各企業の廃液放出と損害発生との間に相当因果関係の認められるかぎり、各企業は、それぞれ、発生した全損害につき責に任ずるとされる(なお、傍論ではあるが、大判昭10・12・20集14巻2064頁)。

そして、加害者たる複数の企業が連帯債務を負担する。

 

 

民法

(不法行為による損害賠償)

第七百九条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

 

(共同不法行為者の責任)

第七百十九条 数人が共同の不法行為によって他人に損害を加えたときは、各自が連帯してその損害を賠償する責任を負う。共同行為者のうちいずれの者がその損害を加えたかを知ることができないときも、同様とする。

 

 

国家賠償法

第二条 道路、河川その他の公の営造物の設置又は管理に瑕疵があつたために他人に損害を生じたときは、国又は公共団体は、これを賠償する責に任ずる。

② 前項の場合において、他に損害の原因について責に任ずべき者があるときは、国又は公共団体は、これに対して求償権を有する。

 

 

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