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2024年03月10日
破産を申し立てられた甲が、未だ銀行から融資を受けられる状態にあるからには、甲に破産原因ありとはいえない

破産を申し立てられた甲が、未だ銀行から融資を受けられる状態にあるからには、甲に破産原因ありとはいえない

 

 

              破産申立棄却決定に対する即時抗告事件

【事件番号】      東京高等裁判所決定/昭和33年(ラ)第623号

【判決日付】      昭和34年5月16日

【判示事項】      破産を申し立てられた甲が、未だ銀行から融資を受けられる状態にあるからには、甲に破産原因ありとはいえない

【参照条文】      破産法126

             破産法132

【掲載誌】        下級裁判所民事裁判例集10巻5号1008頁

             東京高等裁判所判決時報民事10巻5号112頁

             判例時報193号23頁

             金融法務事情210号6頁

【評釈論文】      金融法務事情225号10頁

 

平成十六年法律第七十五号

破産法

(定義)

第二条 この法律において「破産手続」とは、次章以下(第十二章を除く。)に定めるところにより、債務者の財産又は相続財産若しくは信託財産を清算する手続をいう。

2 この法律において「破産事件」とは、破産手続に係る事件をいう。

3 この法律において「破産裁判所」とは、破産事件が係属している地方裁判所をいう。

4 この法律において「破産者」とは、債務者であって、第三十条第一項の規定により破産手続開始の決定がされているものをいう。

5 この法律において「破産債権」とは、破産者に対し破産手続開始前の原因に基づいて生じた財産上の請求権(第九十七条各号に掲げる債権を含む。)であって、財団債権に該当しないものをいう。

6 この法律において「破産債権者」とは、破産債権を有する債権者をいう。

7 この法律において「財団債権」とは、破産手続によらないで破産財団から随時弁済を受けることができる債権をいう。

8 この法律において「財団債権者」とは、財団債権を有する債権者をいう。

9 この法律において「別除権」とは、破産手続開始の時において破産財団に属する財産につき特別の先取特権、質権又は抵当権を有する者がこれらの権利の目的である財産について第六十五条第一項の規定により行使することができる権利をいう。

10 この法律において「別除権者」とは、別除権を有する者をいう。

11 この法律において「支払不能」とは、債務者が、支払能力を欠くために、その債務のうち弁済期にあるものにつき、一般的かつ継続的に弁済することができない状態(信託財産の破産にあっては、受託者が、信託財産による支払能力を欠くために、信託財産責任負担債務(信託法(平成十八年法律第百八号)第二条第九項に規定する信託財産責任負担債務をいう。以下同じ。)のうち弁済期にあるものにつき、一般的かつ継続的に弁済することができない状態)をいう。

 

(破産手続開始の原因)

第十五条 債務者が支払不能にあるときは、裁判所は、第三十条第一項の規定に基づき、申立てにより、決定で、破産手続を開始する。

2 債務者が支払を停止したときは、支払不能にあるものと推定する。

 

 

 

(決定要旨)

 本件記録によると、抗告人神奈川日産自動車株式会社の相手方深作幸兵衛に対する本件破産申立の基本債権は、七通の約束手形額面合計金二百二十四万三千円の債権であることを認めることができる。原審と当審に提出されている株式会社常陽銀行笠間支店の支店長の提出した書面によれば、株式会社常陽銀行笠間支店は相手方深作幸兵衛において抗告人との取引のため資金の必要を生じたときは、相手方のために金二百三十万円程度の融資申出に応じ貸出の準備があることを認めることができる。一方右約束手形は、相手方が坂本敏明又は同人と坂本英明両名を受取人として振り出したものであるが、その第一裏書の裏書人である坂本敏明の肩書には「東洋自動車整備工場責任者」という記載がなされているため、右手形は裏書の連続を欠くものであること、及び抗告人は右手形につき振出人を害することを知つて取得したものであることを理由として、相手方は抗告人に対して右手形金の支払を拒絶しているものであり、また抗告人の右債権はいわゆる無名義債権であつて、未だ債務名義を得ていないことも本件記録上明らかである。なお、相手方が本件係争の債権を除いては、他に債務を負担していることを認めるに足りる資料も存在しない。

 してみると、仮りに抗告人主張の申立債権が存在するものとしても、相手方はその支払をするため前記銀行から融資を受けるについて十分の信用を有しているのであつて、支払不能の状態にあるということはできない。

 抗告人は、銀行の支店長名義の融資証明書は抗告人の債権保護に何ら効力を及ぼさないと主張する。なるほど銀行のなした融資証明が抗告人の本件債権について支払保証の効力を有するものでないことは抗告人の主張するとおりであるが、あるものが破産原因としての支払不能の状態にあるか否かを判定するについては、そのものに対する資産、信用及び労務の点を考慮すべきであつて、銀行から融資が受けられることは、そのものに対する信用状態に深い関係を有することであつて、本件においては、前記認定の融資証明について、相手方が融資中止の措置を受けるような特別の事情を認めるに足る資料はないから、抗告人の右主張は採用できない。

 よつて本件破産の申立を棄却した原決定は相当であるとして、本件抗告を棄却した。

 

 

事案の概要

 抗告人(破産申立人)は相手方(被申立人)に対して二百二十四万余円の手形金債権ありとして破産を申し立てたが、原審は、銀行の支店長が二百三十万円の融資証明書を出しているから、被申立人に破産原因ありとは認められないとして右申立を棄却した。本決定もこれと同趣旨で、銀行の融資証明は支払保証の効力をもつものではないが、破産原因の有無の制定に当つて銀行から融資を受けられるということは大きなプラスであると判示している。

 

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