第2章 改正の目的
今回の法改正の目的について、特許庁の立法担当者は次のように述べています。
デジタル革命により業種の垣根が崩れ、オープンイノベーションが進む中、中小・ベンチャー企業が優れた技術を生かして飛躍するチャンスが拡大している。せっかく取得した特許で大切な技術を守れるよう、訴訟制度を改善する。
特許庁「令和元年度特許法等改正説明会テキスト」(URL)
昨今、大企業に限らず、中小企業やスタートアップ企業も、独自の技術を活かし、イノベーションの担い手として活躍しています。 特許法は、このようなイノベーションを支えるため、優れた技術を保護し、特許権として権利を行使しやすいものである必要があります。
しかしながら、従来の特許法には、次のような課題がありました。
改正前の課題
・証拠収集の困難性
製造方法、BtoBなど市場で手に入らないもの、ソフトウェア製品の特許権侵害については、証拠を収集することが難しく、相手方の特許権侵害を立証するのが困難でした。
公布日・施行日
改正の根拠となる法令名は、「特許法等の一部を改正する法律」(令和元年5月17日法律第3号)です。 この法令によって、特許法だけでなく、実用新案法・意匠法・商標法も改正がなされました。 施行日は、改正点によって、異なりますので注意しなければなりません。
特許法の「損害賠償額の算定方法の見直し」の公布日と施行日は、次のとおりです。
公布日・施行日
・公布日|2019年5月17日
・施行日|2020年4月1日
次の表に、改正点と施行日をまとめました。
その他の改正点の施行日は、それぞれ次のとおりです。
改正される法令 |
改正点 |
施行日
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商標法 |
公益著名商標に係る通常使用権の許諾制限の撤廃 |
2019年5月27日
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特許法 |
損害賠償算定方法の見直し |
2020年4月1日 |
実用新案法
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・国際商標登録出願手続きに係る手続き補正書の提出期間の見直し |
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意匠法
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・保護対象の拡充 ・組物の意匠の拡充 ・関連意匠制度の見直し ・意匠権の存続期間の延長 ・間接侵害の拡充
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特許法 |
・査証制度の創設 |
2020年10月1日
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意匠法 |
・意匠登録出願手続の簡素化 ・手続救済規定の整備 |
2021年1月1日
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