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2024年03月30日
特許法の令和2年改正その5 第5章 ポイント2│特許権者は、一定の要件を満たせば査証制度を利用できる

第5章 ポイント2│特許権者は、一定の要件を満たせば査証制度を利用できる。

次に、「査証制度」を利用するための要件について、説明します。

 

「査証制度」は、専門家が、工場などに立ち入って証拠を収集するものですので、強力な証拠の収集手続きです。 そこで、 「査証制度」を利用するための要件は、厳しく定められています。

 

具体的には、以下の4つの要件を満たすことが必要です。

 

査証の要件

① 必要性

侵害行為を証明するために、査証を利用することが必要であること

 

② 蓋然性

特許権が侵害されている可能性がある程度存在するといえること

(相手方が特許権を侵害したと疑うのに足りる相当な理由がある)

 

③ 補充性

査証以外の手段では、侵害を証明するための証拠が十分に集まらないこと

 

④ 相当性

査証を実施することによって、相手方の負担が重くなりすぎないこと

 

この4つの要件は、新設された特許法102条の2第1項に定められています。

 

(査証人に対する査証の命令)

第105条の2

1 裁判所は、特許権又は専用実施権の侵害に係る訴訟においては、当事者の申立てにより、立証されるべき事実の有無を判断するため、相手方が所持し、 又は管理する書類又は装置その他の物(以下「書類等」という。)について、確認、作動、計測、実験その他の措置をとることによる証拠の収集が必要であると認められる場合において、 特許権又は専用実施権を相手方が侵害したことを疑うに足りる相当な理由があると認められ、かつ、申立人が自ら又は他の手段によつては、当該証拠の収集を行うことができないと見込まれるときは、 相手方の意見を聴いて、査証人に対し、査証を命ずることができる。 ただし、当該証拠の収集に要すべき時間又は査証を受けるべき当事者の負担が不相当なものとなることその他の事情により、相当でないと認めるときは、この限りでない。

 

 

 

第105条の2第1項の読み方

裁判所は、

特許権又は専用実施権の侵害に係る訴訟においては、

当事者の申立てにより、

①立証されるべき事実の有無を判断するため、相手方が所持し、又は管理する書類又は装置その他の物(以下「書類等」という。) について、確認、作動、計測、実験その他の措置をとることによる証拠の収集が必要であると認められる場合において、

②特許権又は専用実施権を相手方が侵害したことを疑うに足りる相当な理由があると認められ、

かつ、

③申立人が自ら又は他の手段によつては、当該証拠の収集を行うことができないと見込まれるときは、

相手方の意見を聴いて、

査証人に対し、査証を命ずることができる。

 

④ただし、当該証拠の収集に要すべき時間又は査証を受けるべき当事者の負担が不相当なものとなることその他の事情により、相当でないと認めるときは、この限りでない。

 

 

 

査証人の選定

専門家の属性について法律の規定はありませんが、専門分野や要証事実(証明しなければならない事実)、手続の内容などを考慮して、弁護士・弁理士・学識経験者などから裁判所が選定すると想定されています。

 

査証手続の費用

特許法105条の2の9によると、査証手続に係る費用のうち、同条に列挙された費用(査証人の旅費、日当、宿泊料、査証料、査証に必要な費用)については、訴訟費用の一部となります。

 

もっとも、サンプルの提供に係る費用など、査証を受けた当事者に発生する費用については、その当事者の負担となります。査証を受けることにより相手方に不相当な負担が見込まれるときには、その事情が発令の要件として考慮されます。

 

訴訟費用は、判決がなされた場合は敗訴者が負担し、和解が成立した場合は各自が負担することが一般的です。

 

相手側が査証を拒んだ場合は、特許法105条の2の5に従い、査証により原告が立証しようとする事実(侵害の事実)が認められます。

 

特許法105条の2の5

査証を受ける当事者が前条第二項の規定による査証人の工場等への立入りの要求若しくは質問若しくは書類等の提示の要求又は装置の作動、計測、実験その他査証のために必要な措置として裁判所の許可を受けた措置の要求に対し、正当な理由なくこれらに応じないときは、裁判所は、立証されるべき事実に関する申立人の主張を真実と認めることができる。

なお、この真実擬制(申立人の主張を真実とみなすこと)は、既存の文書提出命令や検証物提示命令についても規定されています。

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