内容紹介
東京大学高齢社会総合研究機構が中核になって推進する大学院教育プログラムのエッセンス
医療・介護・福祉、住まい、経済的基盤、財産管理、家族・相続、虐待・犯罪、裁判制度――高齢者をめぐる法的課題を広範囲にわたって整理し、その解決方法に重要な視角を提供するとともに、高齢者法の具体像を解説する。高齢者の抱える問題に対処するための法的プランニングにも役立つ一冊。
【本書「はじめに」より】
「高齢者法」と銘打つ本はすでにあるものの、わが国の高齢化の進展は速く、かつ法制度もそれを追いかけるべく改正されるために(近くは、相続法の改正など)、すでにある書物は必然的に陳腐化する。そこで、高齢者に関わるさまざまな法的課題について、現状において最新のデータを提示する教科書がほしいと考えた。何人もの協力でできあがったのがこの書物である。
目次を見ればわかるように、医療・介護・福祉、住まい、経済的基盤、財産管理、家族・相続、虐待・犯罪、裁判制度など、高齢者が直面する課題は多様である。これらに対するに、伝統的な法的観点は、高齢者に関する紛争が起きて裁判で争われるような事象に限定されやすい。従来の法的観点自体を再検討する必要がある。そしてもっと広い視野で、高齢社会が提示する課題に真正面から立ち向かわねばならない。
そういう意味で本書をまず読んでいただきたいのは、法律分野の研究者、実務家、学生などである。だが、高齢社会の問題は法律家だけで解決できないものであるから、法律以外でも、ジェロントロジー(広い意味での老年学)研究や高齢者問題に関わるさまざまな人たちにこの書物を手にとってもらいたいと願っている。
【主要目次】
第1章 高齢者法の意義(関ふ佐子)
第1節 高齢者法とは
第2節 高齢者法の意義
第3節 高齢者の人間像
第4節 高齢者法の法理念
第5節 高齢者特有の横断的な法的課題
第2章 高齢者の医療・介護・福祉(小野太一・樋口範雄・川久保寛)
第1節 それぞれの制度の基本的仕組み
第2節 高齢者医療と法的課題
第3節 介護・福祉に関する法的課題
第3章 高齢者の住まい(松井孝太・原田啓一郞)
第1節 様々な選択肢
第2節 高齢者と住まいに関する法的問題
第4章 高齢者と経済的基盤(中嶋邦夫・中田裕子・関ふ佐子)
第1節 高齢者の経済的基盤――主要なもの
第2節 リバース・モーゲージ
第3節 経済的基盤をめぐる法的課題
第5章 高齢者の財産管理(西森利樹・中田裕子)
第1節 高齢者と財産管理――本人保護と自己決定の尊重
第2節 成年後見制度
第3節 信託による財産管理
第6章 高齢者と家族・相続(牛嶋勉・宮本誠子)
第1節 高齢者と家族に関する法律問題
第2節 相続
第3節 遺言
第4節 遺留分
第5節 遺産分割
第6節 贈与
第7節 民法(相続関係)等の改正の成立
第8節 高齢者の税に関する問題
第9節 相続税が抱える問題
第10節 高齢者の離婚・再婚と法的問題
第7章 高齢者と虐待・犯罪(高橋脩一)
第1節 高齢者虐待に対する法的取り組みとその問題点
第2節 高齢者と犯罪
第8章 超高齢社会・高齢者と裁判(西上治)
感想
人生100年時代が到来し、二本は少子高齢社会に突入しました。
本書は、社会保障法、民法の論点をほぼ網羅しています。ただし、労働法(高年齢者雇用安定法)は抜けています。
第2章高齢者の医療・介護・福祉は、根拠条文の引用がなく不便です。
また、高齢者虐待法に関する222頁の論述のように、考えが浅いところもあります。