被告Y3による各発言や叱責は,その回数および頻度が多く,継続的,執拗に行われたものといえるところ,指導や叱責を行う必要性に欠ける状況であったとは認められないことなどを考慮してもなお,上記発言等は一体として,職務上の地位または職場内の優位性を背景に,継続的にXの人格や名誉感情を侵害し,過重な精神的負担を与える言動であったといえ,社会通念上許容される限度を超えた,違法なパワハラ行為に当たるものであったというべきであるとされた例
宇都宮地方裁判所栃木支部判決/平成28年(ワ)第145号
平成31年3月28日
雇用上の地位確認等請求事件
【判示事項】 1 原告Xに対して直接行われた被告Y2の発言は,いずれも業務との関係でXを指導,叱責する中で行われたものであり,E1室での業務経験が長いY2において,Xに対して指導等を行う必要性に欠ける状況であったとは認められないし,発言内容も,Xへの思いやりや配慮に乏しい面はあったといえるものの,人格非難に及んだり名誉感情を毀損するものであったとはいえず,期間も平成24年9月下旬から同年10月下旬までと長期間にわたるものでもなく,その回数や頻度も限られたものであったといえ,継続的,執拗なものであったともいえず,業務上の指導,叱責の範囲を逸脱したものということはできないとされた例
2 被告Y3による各発言や叱責は,その回数および頻度が多く,継続的,執拗に行われたものといえるところ,指導や叱責を行う必要性に欠ける状況であったとは認められないことなどを考慮してもなお,上記発言等は一体として,職務上の地位または職場内の優位性を背景に,継続的にXの人格や名誉感情を侵害し,過重な精神的負担を与える言動であったといえ,社会通念上許容される限度を超えた,違法なパワハラ行為に当たるものであったというべきであるとされた例
3 国立大学法人は国賠法1条1項の「公共団体」に該当するとしたうえで,Y3のXに対するパワハラ行為は,国立大学法人と民法上の雇用関係にある職員間の指揮監督および安全管理作用上の行為であって,教育研究活動等の国立大学法人の業務上の行為(国立大学法人法22条1項)に当たるものではなく,任用関係にある公務員間における指揮監督または安全管理作用上の行為ともいえないことからすれば,純然たる私経済作用であるというべきであり,Y3の違法行為は,国賠法1条1項の「公権力の行使」に当たらないとされた例
4 被告Y1大学はY3の行為につき使用者責任を負うとされた例
5 Y3の違法なパワハラ行為は,一連,一体のものとしてとらえるべきであり,消滅時効の起算点については,最終の不法行為時である平成25年9月24日と解するのが相当であるとされた例
【掲載誌】 労働判例1212号49頁