農協の理事としての善管注意義務違反がある場合
福岡高等裁判所宮崎支部判決/平成28年(ネ)第91号
平成29年11月17日
組合員代表訴訟控訴事件
【判示事項】 1 農協の理事としての善管注意義務違反がある場合
2 農協の理事が、貸付けの保証債務の履行を求めずに保証契約を解除したことについて、理事としての善管注意義務にも忠実義務にも違反しないとされた事例
【判決要旨】 1 農協の理事は、その職務を遂行するにあたり裁量を有しているというべきであるが、法令または定款に違反してはならないことはもとより、農協はその行う事業によってその組合員および会員のために最大の奉仕をすることを目的とするものとされている農協法の趣旨に照らして、著しく不合理な判断をしたような場合には、理事としての善管注意義務に違反する。
2 農協が、全額出資した会社に対する貸付金について優良貸付債権の外形を作出するため農業信用基金協会等に連帯保証をさせた場合において、基金協会が保証債務の履行に応じることは、農業信用保証保険法の目的および趣旨に反するものであり、他方で、農協が保証債務の履行を受けることは、経済的にみて組合員の利益に資するものではあるものの、農業信用保証保険の制度の趣旨を損なうものであって、基金協会が保証債務の履行を拒絶したことについて相応の法的根拠が存したなど判示の事情の下においては、理事において基金協会に対して保証債務の履行を求めずに保証契約を解除したことは、理事としての善管注意義務に違反するということも忠実義務に違反するということもできない。
【参照条文】 農業協同組合法30の3
農業協同組合法35の2-1
農業協同組合法35の6-1
農業協同組合法35の6-2
平成27年法律第63号による改正前の農業協同組合法40の2
会社法847-1
会社法847-3
【掲載誌】 金融・商事判例1532号14頁